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日本代表 9年前

固定は禁物だが――。ハリル流を体現した“チームの心臓”長谷部。若手の最高の手本に

text by 河治良幸 photo by Getty Images

「オートマティズムとメンタリティが必要」

 結果的に成功はしなかったが、吉田麻也が相手のパスをカットしたところから、前線の永井にボールを付け、そこからの落としをダイレクトでサイドスペースを走る酒井宏樹に出した縦パスはハリルホジッチ監督が植え付けようとしている攻撃を象徴するシーンだった。

 ザッケローニの指揮する日本代表では、中盤で短いパスをつなぐスタイルにあって、縦に急ぎすぎる長谷部の意識は周囲と噛み合なかった部分があるが、アギーレ前監督のもとで存在感が高まった。そしてハリルホジッチ監督が攻撃で求めるプレーは、さらに長谷部のイメージにマッチした感がある。

 ハリルホジッチ監督はメンバー発表の会見で「勝つためには、ある程度のオートマティズムとメンタリティが必要になってくる」と語ったが、長谷部に限れば現時点でもその2つをかなり高いレベルで備えていることは確かだ。

 守備に関してもフランクフルトで重要なポジションを担うことで、ヴォルフスブルク時代に出番を失っていた当時より、機動力も人に対する強さも改善されている。ハリルホジッチ監督の要求も、ドイツの基準に照らし合わせれば特に目新しいものではないだろう。

“初陣”のチュニジア戦でキャプテンマークを巻いた長谷部だが、現時点であくまでゲームキャプテンであり「最終的に決めたキャプテン」ではない。3年後を見据えても、若い選手からキャプテンを任される存在が出てきてほしいが、「ロジックだと思っている」と語るハリルホジッチ監督の判断には反対する余地が無い。

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