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【米国記者の視点】あまりに深いFIFAの闇、史上最大のスキャンダルを追う。W杯開催地変更の可能性も

text by ダン・オロウィッツ photo by Getty Images

提訴は各協会のトップにまで

 批評家はガルシア氏の調査報告書が表に出ないことに失望したが、FBIの調査は続いていた。彼らの情報源となったのは、元FIFA理事の一員で10年間に及ぶ所得税未納による起訴を恐れたために情報提供者として協力するようになったチャック・ブレイザー氏だった。

 CONCACAF(北中米カリブ海サッカー協会)事務局長のブレイザー氏は、2013年のFIFA副会長で被疑者の一人でもあるジャック・ワーナー氏とその同僚によって排除された。

 昨年11月には『ニューヨーク・デイリー・ニュース』が驚くべき真実を明かした。ブレイザー氏は2012年のロンドンオリンピックの際に専用に作られた小型マイク搭載のキーホルダーを隠し持ち、2018年のロシア大会、そして2022年のカタール大会のW杯選定に関わる要人との会話を録音していたというのだ。

 28日朝の米国司法省の声明によれば、ブレイザー氏とワーナーの氏の息子であるダリアン氏とダリル氏の全員がマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税といった詐欺行為に罪を感じていたことを弁解したという。

 水曜に起訴された、CONCACAF会長およびFIFA副会長のジェフリー・ウェブ氏、前ブラジルサッカー連盟会長のジョゼ・マリア・マリン氏、CONMEBOL会長のニコラス・レオスらFIFA幹部の全員が北中米の各サッカー連盟の最上位の職に就いていた経歴がある。

 これはブラジルにとって、今月上旬に報告された同国サッカー連盟がスポンサー企業の意向によって代表メンバーが選出するスポーツマーケティング会社『ISE』との契約問題に続く今月2度目の大きなスキャンダルである。

 当初は夏に開催される予定だった2022年のカタールW杯の放映権料を『FOX』および『テレムンド』が得ていたが、冬開催に変更となったことでTV局側が異論を唱えたため、無競争入札により2026年のW杯(開催地未定)までの放映権を得た。これもいくつかの不可解な出来事のひとつだろう。

 米国が2026年のW杯開催有力地と考えられる一方で、CONCACAFの常習行為に踏み込んだ捜査は、彼らのW杯出場枠を広げるためのロビー活動の努力を脅かすものになるかもしれない。

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