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気温30℃以下のプレミアリーグで給水タイムが設けられた理由。選手を守るために求められる暑さ対策の推進と理解

text by 舩木渉 photo by Getty Images

給水タイムには弊害も。それでも暑さは選手の身体を蝕む

 しかし、給水タイムはいい面ばかりではない。数分間ゲームを中断することで試合の流れが一度切れてしまう。主導権を握っていたチームにとって、休息で一気に展開が変わってしまいかねないという弊害もある。

 これについて元イングランド代表のガリー・リネカー氏は「試合が終わった」とツイートし、ゲームの流れを無視する給水タイムに異議を唱えている。また、ウェストハムの本拠地アップトン・パークではボーンマス戦の前半に設けられた給水タイムにスタンドからブーイングが起こった。試合を楽しみたいファンにとって熱狂に水を差す給水タイムを非難したくなる気持ちは理解できる。

 それでも比較的涼しいイングランドですら暑さのリスクに対して敏感になっている事実を重く受け止めるべきではないか。日本では「熱中症予防」をテーマにした講習なども頻繁に行われているが、それも形だけと思えるほど甘い認識が垣間見えるときがある。やはり選手を守るために給水タイムの必要性はしっかりと議論されるべきだ。

 今年7月に行われた『国際ユースサッカーin新潟』で象徴的な出来事が起こった。3日連続で90分の試合を行う同大会に参加していたセルビア代表の選手が試合中に熱中症で倒れ、救急搬送されてしまったのだ。

 夏の厳しい暑さの中で過密日程をこなさなければならなかった特殊な条件であったことも問題だが、そういったリスクから選手たちを遠ざけるための努力は常に為されなければならない。

 たとえば高校生にとってのビッグトーナメント、夏のインターハイやクラブユース選手権は真夏に連日試合をこなすハードスケジュールを前提に日程が組まれている。毎年恒例の行事だが、今と昔では競技を取り巻く環境が大きく違う。時代とともにそういった大会の運営方式も見直す必要があるのではないか。

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