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クロップはリバプールをどう変えたのか? 迷いからの開放をもたらしたマネージメント力

text by 山中忍 photo by Getty Images

適材適所の選手起用で取り戻した自信

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クロップ監督のもとで自信を取り戻したアルベルト・モレノ【写真:Getty Images】

 クロップ体制下でのシステムも、局面によって4-2-3-1、4-3-2-1、4-1-4-1、4-2-4と変化はする。しかし、攻撃面に主眼を置いた3バックとの併用だった後方は既に4バックの基本化を見た。

 その中央では前監督の信頼を得られなかったママドゥ・サコがチーム最高レベルのパフォーマンスを連発。ウィングバック起用が裏目に出ていたアルベルト・モレノも本来の左SBとして自信を回復している。SBの攻め上がりは「クロップ流」の特長の1つだが、上がりっ放しというわけではない。まだ英語が片言で、味方のコーチングもスペイン語でないと耳に届かないモレノには、前方を眺めながら守れる状況が好ましい。

 適材適所は、それぞれDF起用と中盤アウトサイド起用から解放されたエムレ・ジャンとロベルト・フィルミーノにも言える。ジャンが攻守両用のMFとして持ち味を発揮できるようになる一方で、前監督からセンター起用を約束されて今夏に加入したジェームズ・ミルナーがはみ出る恰好になるが、中盤中央ではボール奪取後の展開力不足が物足りない本人にとっても、最大の武器であるスタミナで勝負できる右アウトサイド起用は悪くない。

 フィルミーノが前線中央を任されることで、フィリペ・コウチーニョは左サイドに回る機会が増える。といっても、前体制下で経験した3-5-2のアウトサイドとは違ってインサイド寄り。当人は、トップ下でスタートしても左に流れる動きを好むだけにアウトサイドという苦手意識はないのではないか?

 その証拠にチェルシー戦では、フィルミーノが「偽9番」役を務めた前線の左サイドで2得点。開幕節を最後に得点がなかったスランプからの脱出さえ予感させた。

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