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クロップはリバプールをどう変えたのか? 迷いからの開放をもたらしたマネージメント力

text by 山中忍 photo by Getty Images

一時は「戦力不足」の指摘も…クロップ監督のもとトップ4争いへ

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クロップ監督就任後は持ち味の高さを発揮しているクリスティアン・ベンテケ【写真:Getty Images】

 その内の1点はクリスティアン・ベンテケの落としを経由している。前監督は、開幕から得点不足が指摘されていても「早目に彼に当てるのは簡単だが…」と言葉を濁し、足下でつなぐ理想との狭間で揺れている感があったが、新監督はターゲットマン活用を厭わないようだ。巨漢のCFは、ゴールキックを頭で後方に流してからチェルシーのゴールにシュートを蹴り込み、前週のサウサンプトン戦(1-1)ではヘディングでネットを揺らしている。

 いずれも途中出場からの得点だが、故障明けからコンディションが戻れば、単なるパワープレー要員ではなくダニエル・スタリッジと1トップで使い分けられる可能性は高い。

 クロップが好むスピードではスタリッジが勝るが、今季も怪我の繰り返しで11節までの出場は3試合のみ。昨季も、前線の主役に想定したスタリッジの欠場続きが前監督にとっての誤算だった。

 両FWの共存も試されるだろう。例えば2トップの背後にダイアモンド型の中盤を配するシステムは、古巣ドルトムントでもクロップの採用歴がある。コンパクトな中盤は、純粋なウィンガーが19歳のジョーダン・アイブしかいないリバプールに向いているとも考えられる。

 だが、それは両者揃って先発可能なコンディションを取り戻してからの話。その頃には、中盤からダイナミックな攻撃参加を見せるジョーダン・ヘンダーソンも怪我から復帰しているはずだ。

 クロップ体制下の最強布陣決定にはまだ時間がかかる。それでも、新監督のプレミア初勝利後にはリーグ優勝の可能性に関する質問が出た。

「正気か?」と、呆れ顔で時期尚早を訴えた指揮官。だが内心は微笑んでいたかもしれない。その3週間ほど前に引き継いだチームは「トップ4争いにも戦力不足」と言われていたのだから。リバプールは既に変わっている。

【了】

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