サッカーは誰のものか? サポーターを敵に回した連盟とAリーグ。豪州は“内戦状態”

2015年12月08日(火)15時08分配信

text by 植松久隆 photo Taka Uematsu , Getty Images
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連盟は豪州サッカーを守れるか

 FFAのスティーブン・ローイ新会長がこの件で公式に発言をしたのは、12月3日、CEOのギャロップを伴って応じた記者会見だった。問題の記事掲載から実に11日の月日が流れていた。

 その席でローイは、「我々はサッカーを愛する絶対的大多数の人々と共にある。我々には発煙筒を投げるような人々は必要ない。非社会的な態度も必要ない。そして、暴力行為の容疑者を見つけ出すことに対しての躊躇は無い」と発言。そしてウィルソンの記事が出てからのFFAの行動に関しては「対応を誤った」と認め、リストに掲載された違反者に関する再調査を示唆した。

 豪州サッカーはその成長の過程で、サッカーの急激な普及に直接的な影響を受ける他球技関係者から、言われのない攻撃を常に受け続けてきた。ナショナル・ダービーとなった昨年のグランド・ファイナルの会場として、最大収容数3万人そこそこのAAMIスタジアムしか抑えられなかったのは、地元で影響力のあるAFL(オージーフットボール)サイドの嫌がらせだ、という噂がまことしやかに囁かれた。

 前述の記事を執筆したウィルソンのように、サッカーファンの行状を誇張して攻撃する勢力は常に存在してきた。サッカーのライバルであるAFLにもラグビーリーグにも、暴力的行為や言動を見せるファンはいるのだが、“サッカーヘイター”はそのあたりは問題にしない。

 いずれにしても、今は豪州サッカー界が内輪もめをしている時ではない。本来であれば、手を携えてサッカーヘイターに立ち向かわねばならなかったのだ。今回のファンの抗議は、FFA中枢部への強烈なメッセージを送った。

「パブに行ったよ」とだけ書かれた横断幕のみを掲げて試合に姿を見せないようなサポーターが多くなることによる入場者数減少は、クラブ経営にボディブローとなってダメージを与える。さらに、このような不毛な対立が続くことで、スポンサーへのイメージが低下したり、新たなファン獲得が困難になったりする。「百害あって一利なし」であるに違いない。

 明らかにFFAは初期対応を誤った。しかしここから積極的に介入すれば、“終わりよければすべて良し”で上手く収められる可能性はまだある。新会長スティーブンが、この件でイニシアチブを積極的に発揮したならば、親の七光り的なイメージもすっかり晴れるかもしれない。

 何よりもまず彼らには、ファンが横断幕に染め抜いた“No Fans=No Football”の意味を今一度思い起こしてもらいたい。FFAは、サッカーを、そしてサポーターを守れるのか―豪州サッカー界全体が、今後の成り行きを注意深く見守っている。

【了】

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