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アーセナルはなぜ負傷者が多いのか。諸刃の剣となった“美しいスタイル”、ヴェンゲル監督の責任とは?

text by 山中忍 photo by Getty Images

ヴェンゲルに生き、ヴェンゲルに死す“アーセナル道”

アーセナルはなぜ負傷者が多いのか。諸刃の剣となった“美しいスタイル”、ヴェンゲル監督の責任とは?
依存度の高いアレクシス・サンチェスの負傷は大きな打撃に【写真:Getty Images】

 その最新例であるサンチェスは、移籍1年目の昨季中から過度の依存が危惧されていた。カソルラはセンターハーフ起用が意外にも奏功しているが、フランシス・コクラン台頭の他にも中盤中央の戦力アップを見ていれば、駒数が揃っている2列目要員の1人であり続けただろう。

 代役が乏しいポジションの欠員はチームとして補う方法もある。例えば昨季は、得点源のジエゴ・コスタに負傷欠場が続いたチェルシーが、堅守への意識を強めて優勝へとひた走った。だがアーセナルには、基本姿勢を曲げる意思もなければ、スタイルを変えて戦い続けるだけの適応力もない。

 となればヴェンゲルは、予てから補強課題と言われている新ストライカーと新ボランチを買っておくべきだった。そのための資金も十分にあったのだ。

 つまり指揮官には、故障者続出の直接的な責任はなくても、故障者発生が目立ってしまう点で責任があると言える。

 ただし、これは言わば両刃の剣。ヴェンゲルのアーセナルが美しい理由でもある。敢えてフィールド選手を補強しなかった今夏の判断は、配下の選手に対する絶対的な信頼の証だ。

 手負いのアーセナル戦士たちも本望なのだろう。「剣に生き、剣に死す」が武士道であれば、「ヴェンゲルに生き、ヴェンゲルに死す」のが“アーセナル道”なのだと。

【了】

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