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モウリーニョ解任の是非。すれ違った相互理解、不振はチェルシー史上最高の指揮官の責任に

text by 山中忍 photo by Getty Images

相次ぐ主力の不調。効かなかった「飴と鞭」

モウリーニョ解任の是非。すれ違った相互理解、不振はチェルシー史上最高の指揮官の責任に
いまだ不調から抜け出せないエデン・アザール【写真:Getty Images】

 但し、それが結果商売の現場を任される監督の宿命でもある。だからこそ、とどのつまりはオーナーの堪え性のなさと冷酷さが問題なのかと言われれば、その答えも「ノー」になる。

 過去、正監督の立場でロマン・アブラモビッチに解雇された指揮官はモウリーニョの他に6名。その内、解任時点でのリーグ順位は2012年3月にアンドレ・ビラス・ボアスが切られた際の5位が最低だった。

 最後となったシーズンにおけるリーグ戦でのチーム勝率と平均得点も、それぞれ「55%」と「1.71」でビラス・ボアス解任時が最低。平均失点は、やはりビラス・ボアスと08年5月のアブラム・グラント体制終了時が最多となっていた。これらの数字の全てにおいて、開幕16戦で18得点26失点、4勝9敗3引分けの16位という今季モウリーニョ解任時は他6名の解任時に劣っているのだ。

 クラブは「監督と選手の間の不和」を別れの潮時と判断した理由に挙げてもいる。「明らかな」と強調までされていた。選手の謀反さえ想像しかねない表現は強すぎる感があるが、モウリーニョ得意の「飴と鞭」が効かなくなっていた事実は、調子が上がらないまま12月を迎えた事実が物語る。

 低迷の中で自信を落とす一方の選手たちに鞭を打ち過ぎたようだ。奮起を促す狙いとはいえ、個人名を挙げた主力の批判は開幕2戦で1ポイント獲得に終わった時点から始まった。

 鞭に応える気力を失ったと思われる代表例がエデン・アザールだ。負傷退場した16節まで無得点の2列目エースは、同じく不振のD・コスタとセスクよりも早くリーグ戦でスタメンを外された。理由は守備面の貢献不足。

 その後も、誉められたかと思えばすぐにまた守備面を非難された。昨季のプレミア最優秀選手とはいえ、スランプを認めてもいた24歳にすれば、叱咤よりも純粋な励ましが欲しい気持ちがあったのではないか?

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