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本田の誤訳騒動はなぜ起きたか。伊メディアの印象操作が生んだ”犠牲”

text by 編集部 photo by Getty Images

本田の誤訳騒動はなぜ起きたか。伊メディアの印象操作が生んだ”犠牲”
本田圭佑【写真:Getty Images】

 去る5日、ミランの本田圭佑が日本のメディア向けインタビューでクラブを批判したのではないかという報道がイタリアを駆け巡った。結果的に現地メディアの意図的な発言の抜き出しが招いたミスリードと判明したが、今回の一件はどのような経緯で起こったのだろうか。

 我々フットボールチャンネルはイタリアメディアの第一報を引用していち早く記事を作成、配信した。イタリア人記者の協力もあり翻訳に誤りはなかったが、読者に少なくない混乱を招いた責務として経緯を振り返りたい。

 まず報道の元となったインタビューは『共同通信』が英語版サイトに有料記事として掲載したものだった。その中から問題になった本田の発言を日本語訳すると以下のようになる。

「僕が言いたいのは、過去3年間に誰と契約したかということ。カカ、ロビーニョ、(マリオ・)バロテッリ、そして現在アトレティコ・マドリーで素晴らしいプレーを見せているフェルナンド・トーレスがいた。人々はそれに気づいていなかったように見える。他に誰がいたか? (サリー・)ムンタリ、(マイケル・)エッシェンがいたね。僕らには何人もの本当に優れた選手達がいたのに、彼らはここを去っていったんだ」

 これを含めた本田の発言をいくつか切り取ったイタリアメディアは、昨年に続き2度目のクラブ批判ではないかと特ダネに飛びついた。『コリエレ・デッロ・スポルト』紙は「本田、ミランを批判『キャリア終盤の選手を獲得しても役に立たない』」というタイトルをつけて大々的に報じた。

 記事の後半では本田のインタビューでの発言が引用され、「クラブが継続性を欠き、それに比例して暗黒期が伸びている。ミランにはカカやロビーニョ、バロテッリ、F・トーレスといった優れた選手達がいた。残念ながら、おそらくキャリアの終盤に差し掛かった選手を1人獲得するだけで全ての問題を解決すると考えるのは不十分だ」と語ったとされた。

 双方の内容を比較すれば『共同通信』の原文と『コリエレ』紙の発言内容には大きな違いが存在することがわかる。しかしながら、大手新聞社が「キャリア終盤の選手は訳に立たない」と報じたことで多くのイタリアメディアが続き、「本田、またしてもクラブ批判」と書きたてた。

 ミランのシニシャ・ミハイロビッチ監督は同日の記者会見で「私も過去に母国での発言が間違った意味に訳され、訂正を求められたことがあった」と本田を擁護し、本人に真意を聞いてみるべきと述べて深くまで言及することを避けた。

 さらにその後、クラブ公式TV『ミラン・チャンネル』では本田がアドリアーノ・ガッリアーニCEOと面会し、「これまでクラブやチームに自分のベストを見せられていないことを謝りたい」と自らの力不足を謝罪したうえで、今回の発言の真意を説明して無事理解を得たと伝え、事態は収束へと向かっていった。今回の一件で、本田は悪い意味で”メディアの犠牲”になってしまったと言えるだろう。

【了】

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