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本田圭佑 8年前

クラブ批判を乗り越えて――。本田に示した指揮官のリスペクト。主将も称賛した戦術眼

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

相手のストロングポイントを消した本田

 レビューでも紹介させていただいた通り、本田はマルコス・アロンソと対峙することになった。スピードとパワーを兼備し、サイドバックでありながらフィオレンティーナの左の突破を一手に担う優秀なアウトサイドだ。

 彼に対する本田の守備は徹底していた。相手が低い位置にいるときはプレスを掛けて左足のコースを切り、スペースへ出れば即座にカバーに入る。前半14分、味方のボールロストからアロンソに展開されるが、本田は詰めてボールをカット。そのボールに対してはしっかり体を張ってキープ、詰めてきたアロンソにもボールを触らせず、最後はクリアに成功した。

 30メートルくらいの距離を走ってアロンソのクロスのクリアにも成功したり、攻撃参加したイニャツィオ・アバーテの裏に回ってスペースを閉めたりと、課せられたタスクは懸命にこなした。フィオレンティーナの武器の一つとなっていた彼のサイドアタックは、本田の守備で消された。

 だが、本田はただサイドバック然にアロンソに張り付き、上下動をしていたわけではなかった。自陣に引く際にはただサイドに張るだけではなく、外へ開くアロンソのマークをアバーテに受け渡しながら、自らは中央へ絞る。

 ピッチの中央でパスを組み立てるボルハ・バレーロらに対する守備のためだ。こうして中に絞り、味方選手とのプレスでインターセプトに成功したシーンも度々あった。

 DF出身らしく、ミハイロビッチの真骨頂は綿密な守備戦略にある。誰を抑えるべきか、どこのゾーンを締めるべきか、相手チームの組み立てを破壊するためにはどこに詰めるべきかという分析は細かくなされ、各選手には厳しくタスクが割り振られていたはずである。本田がそれをきちんと理解し遂行したことは、勝利への重要な貢献と見るべきものだ。

 それに、良かったのは守備だけではなかった。相手が密集を掛ける中、冷静に周囲を把握し、シンプルかつ正確にボールを放し、縦パスも付けた。少し前ではこうした場面で迷った末にロストを連発していたから、向上が感じられる部分だ。

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