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蘭2部で奮闘するサムライ、逆境をバネにチャンス掴めるか。夢の五輪出場へ信じるは努力のみ

text by 舩木渉 photo by Getty Images

五輪のため少ないチャンスを確実に掴む

ドルトレヒトのファン・ウェルメスケルケン・際
リオ五輪のメンバー入りなるか【写真:Getty Images】

 ファン・デン・ハム監督の信頼も疑いはない。SBで起用できなくとも、際の優れたテクニックとプレービジョンを信じて中盤で辛抱強く使い続けている。止める、蹴るといった基礎技術とスタミナはチーム随一で、常に広い視野を確保できるSB以外にも活躍の場があると踏んでいるのだろう。ファンも「スシ! スシ!」コールで地元のスターに大きな期待を寄せている。

 シッタード戦は出場する前からすでに1人少なく、中盤を飛ばした大味なサッカーになっていたため見せ場は少なかったが、随所に質の高さを見せていた。身体の大きな相手DFに臆することなく突っ込んでいき、気の利いた散らしで攻撃を落ち着かせる。前線の選手が守備を怠りがちな中で、攻守両方に気を遣える際の存在は貴重だった。

 次節VVVフェンロ戦は「前半戦も負けている時にチャンスを掴んで出場機会を増やせた」と語る日本人DFに後半戦最大の好機が巡ってくる。シッタード戦で中盤に入ったフルーヘルスは退場処分を受けたため出場停止で、チームは怪我人続出により紅白戦もままならない状況だ。必然的に際が先発起用される可能性は高まる。

 監督が科す理不尽なまでのハードトレーニングに耐えてきたことでタフさが増し、厳しい当たりにも踏ん張れるようになってきた。シッタード戦はベンチ入り6人のうち2人が怪我人でウォーミングアップすらしなかった。そんな状況でも「ユース時代からの厳しいトレーニングの積み重ね」が生きて今に至る。レギュラーへ返り咲くために、半年間で自信を手に入れた際はストイックに自らを追い込み、虎視眈々とチャンスをうかがっている。

【了】

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