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レアルが陥った「ポゼッション」の誘惑。マドリー・ダービーの明暗分けた“成熟度”

text by 海老沢純一 photo by Getty Images

サッカーとはゴールを奪うスポーツ

ディエゴ・シメオネ監督
ディエゴ・シメオネ監督【写真:Getty Images】

 さらにマドリーのロングパスは74本を数えた。ジダン監督はポゼッションを重視しているといってもロングパスを織り交ぜて速攻での得点パターンも狙っているが、あくまで基本はショートパス。ロングパス74本というのは過去最多であり、この試合での攻撃が理想的ではなかったことの表れといえる。

 この両チームのチャンスメイク数を見るとレアル・マドリーが8回でアトレティコが7回。支配率、パスの精度ともに大きく上回りながら作り出したチャンスの数はほぼ同じというのはレアル・マドリーにとって受け入れがたい事実だろう。

 そして、結果はグリーズマンのゴールでアウェイのアトレティコ・マドリーが勝利。ホームでは圧倒的な強さを見せてきたジダン・マドリーだったが、ダービーという重要な一戦で初の敗戦を喫した。

 この両者の勝敗を分けたのは、チームとしての成熟度だった。チーム発足から約2か月が経過したマドリーに対して、アトレティコは2011年からシメオネ監督が率いる。

 これまで、「ポゼッション」「攻撃的」と言ったフレーズの誘惑に取り憑かれては追い求めるあまり、幾度となく指揮官の首を挿げ替えてきたマドリーにとって、「成熟度」は何よりも難しい課題かもしれない。

 ディエゴ・シメオネの考えるサッカーが骨の髄まで浸透しているアトレティコは、サッカーがボールをつなぐスポーツではなくゴールを奪うスポーツであることを改めて伝えてくれた。

【了】

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