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レスター優勝の裏で演じる「悲劇の二都物語」。降格危機に瀕するニューカッスルとサンダーランドの過去と現在

レスター・シティが奇跡の優勝を果たした今季のプレミアリーグの裏で、「残念な予想通り」となってしまったニューカッスルとサンダーランドの残留争い。両チームによる“タイン・ウィア・ダービー”はプレミア屈指の熱さを誇るが、来季は実現することはない。悲劇の「二都物語」の主人公となってしまった古豪の過去と現在とは?
(取材・文:山中忍【ロンドン】)

text by 山中忍 photo by Getty Images

レスター優勝の裏で起こる「残念な予想通り」

ニューカッスル サンダーランド
ともに降格危機に瀕するニューカッスルとサンダーランド【写真:Getty Images】

 去る5月2日、レスター演じる「シンデレラ物語」がクラブ史上初の優勝でハッピーエンドを迎えた今季プレミアリーグ。残る2週間では、残留を懸けた「二都物語」の結末が注目される。

 舞台はタイン・アンド・ウィア州の2都市。ニューカッスルとサンダーランドで、互いにイングランド北東部の雄を自負する両地元クラブには、それぞれCL優勝歴を持つラファエル・ベニテスと、「残留請負人」の異名を取るサム・アラーダイスを今季途中で監督に迎えていても、揃って2部リーグに落ちる悲劇の主人公となる危険性がある。

 ノリッジとの三つ巴の残留争いに敗れるシナリオが意味するものは、嬉しい予想外となったレスター優勝とは正反対の「残念な予想通り」。近年のプレミアでは古豪衰退が指摘され続けてきた。34年前にはヨーロピアンカップ(現CL)優勝も成し遂げたアストンビラの降格が既に決まっている今季、北東部の「眠れる巨人」も後を追うことになってしまう。

 チェルシーやマンチェスター・シティが強豪と化した21世紀からのプレミアファンは、ニューカッスルとサンダーランドに下位のイメージを抱いているかもしれない。だが両軍には、サポーターが弱小ではないと胸を張るだけの歴史がある。

 1892年創立のニューカッスルは、20世紀初頭の10年間に3度の1部リーグ優勝と4度のFAカップ決勝進出を果している。20世紀終盤にプレミアと名を変えたトップリーグでも、ケビン・キーガンが指揮を執った90年代半ばに、ダビド・ジノラ、アラン・シアラー、レス・ファーディナンドらを前線に擁する攻撃サッカーで優勝に迫った過去を持つ。

 サンダーランドの歴史はニューカッスルよりも13年長い。1部で計6度の優勝を記録した20世紀前半までは紛れもないイングランドの強豪だった。58年に起こったクラブ史上初の降格は、今で言えば、プレミア優勝から12年間遠ざかっているアーセナルが2部に転落するような衝撃だったのではないだろうか?

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