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【レスターはなぜ強かったのか?―1】シンプルでも崩れなかった理由。空間を制圧した“サッキ流”ゾーンプレス

下馬評を覆しプレミアリーグを制したレスター。奇抜ではない戦い方をし、またスター選手不在であるにもかかわらず、彼らはなぜ強かったのか? シンプルななかに隠された緻密な戦術を徹底分析する。(文:コンスタンティン・エッケナー)

ゲリラ戦術と比較されたレスターの戦い方

レスター分析
レスターの基本布陣は4-4-2。各選手の動きには特定の規律がある。

 クラウディオ・ラニエリはレスターの監督に就任して以来、自身が導入した4-4-2フォーメーションにこだわり続けている。4-4-2は、通常著しい欠陥をもった英国伝統のシステムである。特にポゼッションに重点を置きたいチームが採用する場合はそれが顕著に現れる。ところがレスターの場合は非常にうまく機能している。

 このイタリア人監督がチームの形態を変更したのは数回だけ。例えば、12月の対マンチェスター・シティ戦では、4-1-4-1のシステムを採用した。

 ラニエリの4-4-2は、守備時において空間をコンパクトにすることが容易である一方で、最前線に厚みをもたせている。その布陣は、ボールを取った後でも変わらない。守備時では4-4-1-1ととらえることも可能かもしれないが、それはただ布陣に関しての数字を人がどう利用するかという問題にすぎない。

 指揮官の理念はトランジションをつくること――カウンター攻撃を仕掛けるために、プレッシングの個々の局面の間で守備位置をシフトする。つまり、素早いトランジションプレーによって生み出される、相反する力に乗じて試合のペースを作り出す。そしてそのリズムに対応する。

 レスターは試合中、混乱を生み出すことを念頭に、ピッチに動揺を作り出し、システムを壊すことが目的になることさえある。さもなければ、お互いの強みを生かす従来型の戦いをせざるを得なくなる。このような変化に乏しい状況はレスターにとって有利ではない。

 対戦相手がレスターに主導権を許すような場合、その試合を混沌としたものにする必要がある。

 雑誌『FourFourTwo』では、レスターの戦術が伝統的な軍隊に対するゲリラ攻撃と比較されたこともある。かなりの拡大解釈であるが、それについて考えれば考えるほど、その比較に好感がもてるようになる。レスターは、多くの対戦相手の非柔軟性から、カオスを生み出し、そこから恩恵を得ている。

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