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【スペイン人記者の眼】Aマドリーのお株を奪ったRマドリー。ジダンのカリスマ性が可能にする“堅実な”レアル

シリーズ:E・オルテゴの戦術眼 text by エンリケ・オルテゴ photo by Getty Images

ジダン最大の特徴は、そのカリスマ性

そのカリスマ性でレアル・マドリーを導いたジダン監督
そのカリスマ性でレアル・マドリーを導いたジダン監督【写真:Getty Images】

 試合は1-1のまま延長戦に突入。シメオネは交代カードを2枚残していたが、フィリペ、コケが負傷したことで、戦術的意図によってそれを切ることはかなわなかった。この出来事も相まって、延長戦は戦術の駆け引きよりも耐久戦の様相を呈し、結局PK戦に勝敗を委ねたのだった。

 この一戦でマドリーにタイトルをもたらしたのは、アトレティコが主力武器としているセットプレーだった。オフサイド疑惑のS・ラモスの得点は、クロースのサイドからのフリーキックをベイルが頭で後方に送るという意図的なプレーから生まれたものであり、またPK戦におけるL・バスケス、マルセロ、ベイル、S・ラモス、C・ロナウドのシュートは非の打ち所がなかった。

 マドリーはセットプレーから幾度もシュートを放ち、アトレティコのお株を奪った。またシメオネのチームがこの主力武器を生かせなかったのは、マドリーの対策がほぼ完璧だったためにほかならない。マドリーは連係、アグレシッブさ、相手に先んじるプレーと、アトレティコのコーナーキック&フリーキックの場面で見事な対応を見せていた。

 監督ジダンの最大の特徴は、そのカリスマ性によって、セットプレー戦術含めチームに堅実さを植え付けられることに集約する。この一戦ではリードを得た後に消極性という形でも現れたが、スター選手たちを従わせ、ハードワークや戦術を浸透させられることはやはり強みだ。ジダンが監督として経験を積んでいくことを見込めば、このマドリーはさらなる快進撃をも予感させる。

(文:エンリケ・オルテゴ/翻訳:江間慎一郎)

【了】

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