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EURO2016 8年前

【西部の目】EURO、ポゼッション型の成否。カウンター型との対峙。FWの剛健さとアンカーの掃除力

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

FWに求められる陽動作戦とシュート

 中盤の流動性は高く、スペインはボールサイドに逆サイドのウイングも移動して局面的に数的優位を作り、ただでさえ高いポゼッション力を強化している。後方待機3人、中盤6人、最前線1人が共通する基本構成だ。ボールサイドへの人数投入はチームによって差があり、ドイツはスペインほど密集を作らない。イングランドはさらに距離感が長くなる。

 4-3-3、4-2-3-1のいずれも最前線のFWは1人だけ。長身で頑健、パワーと高さに恵まれたタイプが起用されている。

 ポゼッション型の強豪国と対戦する相手は、引いてブロックを作って守る。そのためにポゼッション側は包囲戦になり、どこかでブロック内にパスを通してから崩しにかかる。包囲戦における1トップの役割は大きく2つある。

 1つは、相手のディフェンスラインと駆け引きしてラインアップをさせないこと。裏を狙う動きを繰り返してディフェンスラインを牽制し続ける。しかし、これはほぼ陽動作戦。裏のスペースは実質的に10メートルほどしかなく、単純な動きで裏をとれる可能性はほとんどない。

 ドイツはゲッツェを1トップに起用していたが、CF不足という事情があるとはいえライン牽制だけなら誰がやっても同じだからだ。間受けのできるゲッツェが引いたときは、他の選手がトップに上がってライン牽制を行う。いわゆるゼロトップだ。しかし、3戦目には強靱なCFであるマリオ・ゴメスを1トップに起用している。その理由は2つめの役割に関わってくる。

 1トップのもう1つの役割は、いうまでもなくシュートだ。しかし、得点パターンはある程度偏る。ポゼッション型チームの攻撃は大半が包囲戦だからだ。大きなスペースでスピードを生かす場面はあまりないので、スピードを特徴とするFWはあまり見せ場がない。

 その点で、当初包囲戦を志向しながらスピードが武器のルカクを1トップに据えているベルギーはミスキャストといえる。スペインのモラタも同じ理由であまり活躍の機会がない。戦術との相性だけならアドゥリスのほうが合っている。

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