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ビエルサとラツィオの短すぎる“結婚生活”。就任2日後に辞任の衝撃。性格の不一致によるすれ違い

text by 藤坂ガルシア千鶴 photo by Getty Images

「取材は会見のみ」の方針は、平等性を担保するため

 では、その「ビエルサらしさ」とは一体何なのか。最も良い例は、個別のインタビューを受け付けず、取材は会見式のみという徹底した姿勢に表れている。

 ビエルサがこのスタンスを定めたのは、アルゼンチン代表監督に就任した98年のことだ。

「一国の代表監督ともなれば当然考えや意見を公表する義務がある。そのため数多くのメディアが取材を希望することになるが、全てに応対していたら時間がいくらあっても足りない。私は大手の新聞にも地方の小さなラジオにも同様の機会を与えたいので、会見という形をとることにした」

 立場を理解し、相手を敬い、平等を貫く。「取材は会見のみ」というやり方は18年経った今も変わっておらず、ペップ・グアルディオラに影響を与えたことでも知られている。

 一部のメディアや記者による取材だけが許可・優先されることが日常茶飯事となっているアルゼンチンのサッカー界で、ビエルサは特別扱いを嫌った。ビエルサと旧知の仲にある記者は何人かいるが、その中で98年以後に単独インタビューを実現した者はひとりもいない。

 また、私が実際に体験したこんなエピソードもある。ビエルサがニューウェルス・オールド・ボーイズの監督を務めていた91年、当時同クラブでプレーしていたフェルナンド・ガンボアにインタビューすべく、チームが宿泊していたホテルを訪れたときのこと。食事に向かうガンボアをつかまえて取材を申し込むと「OKだけど監督に許可を取ってくれ」と言われ、私はビエルサを待つこととなった。

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