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ビエルサとラツィオの短すぎる“結婚生活”。就任2日後に辞任の衝撃。性格の不一致によるすれ違い

マルセロ・ビエルサがラツィオの監督に就任したと発表されて2日後、「はやくも辞任」というまさかのニュースがサッカー界をかけめぐった。この“スピード離婚劇”の原因は何なのだろうか。ビエルサには“エル・ロコ”(クレイジー)という愛称がついていることから、さすがの奇行と評する人々も多かった。だがこのアルゼンチン人監督の行動は、突拍子もないようで一貫性がある。(取材・文:藤坂ガルシア千鶴)

text by 藤坂ガルシア千鶴 photo by Getty Images

“エル・ロコ”(クレイジー)の誤った理解

就任から2日でラツィオの監督を辞任したマルセロ・ビエルサ
就任から2日でラツィオの監督を辞任したマルセロ・ビエルサ【写真:Getty Images】

 先日、マルセロ・ビエルサが就任からわずか2日後にラツィオの監督を辞任したというニュースが発信されるや、各国のメディアとサッカーファンは一斉に「ビエルサらしいことだ」という反応を示した。

 どうやらビエルサの愛称「エル・ロコ」(クレイジー)の意味が「突拍子もないこと、常識外れなことを平気でする人」と誤って解釈されているらしく、日本ではSNS上で「奇人と呼ばれるだけのことはある」、「さすが変人」といったコメントもあった。

 一方、ビエルサの母国アルゼンチンのスポーツ記者たちによる受け取り方は違った。スピード辞職のニュースが舞い込んだとき、彼らが真っ先に抱いたのは「ラツィオは一体何をしたのか」という疑問だった。

 契約成立からたった48時間後に辞任を決意するような突拍子もない出来事を招いたのは、エル・ロコと呼ばれる男ではなくクラブであることを確信していたからだ。

 長引いた交渉の末ようやく契約にこぎつけたにもかかわらず、最悪の結末に困惑・憤慨するラツィオは、公式声明の中でビエルサに対する法的措置も考慮している旨を明らかにした。だがラツィオ側をさらに刺激したのは、辞任直後に浮上した「次期アルゼンチン代表監督としてのオファーがあったのではないか」という憶測だった。

 ヘラルド・マルティーノがアルゼンチン代表監督を辞任したのが7月5日。その時点ではまだラツィオと交渉中だったビエルサは、アルゼンチン国内のメディアによって次期代表監督の最有力候補に挙げられた。

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