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先の見えないマンチェスターダービー。半信半疑なペップの手腕と唯我独尊なモウリーニョの世界観【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

先の見えないダービー。かつてない混戦レースの象徴的幕開けへ

モウリーニョ
マンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョ監督【写真:Getty Images】

 方やモウリーニョは言わずと知れた“プレミア通”で、一通りの経験値による戦い方の機微に関してなら、当然ペップより一日の長がある。その点では遥かに“有利”だ。

 ただし、彼の方にも危ない諸刃の剣が見え隠れしてこないだろうか。それはずばり、ジョゼ君ならではの唯我独尊を絵に描いたようなフットボール観と、ドライでやや投げやりにも見えるプレーヤー掌握術。そう、つい先頃、今季生まれ変わったように生き生きとしているチェルシーのエース、エデン・アザールが、実に気になることをつぶやいているからだ。

「(新任の)アントニオ・コンテは酷いシーズンを過ごしたばかりのぼくらを信頼してくれている。自身がプレーヤーだったから分かることも多いんだろう。彼のためにぼくらはベストを尽くす」

 そして、モウリーニョはそうではなかったと言わんばかりのこの証言は、今、代表でのポジション論議の渦中にあって“揺れている”ウェイン・ルーニーの優等生発言と“怪しく”呼応するのだ。「さすがはモウリーニョ。覇権奪回が見えてきた」。

 妙に気になる。胸騒ぎすらする。ルーニーのいささか子供っぽい楽観、アザールのあてこすり、コンテの恐るべき演技スキル、そしてペップの得体のしれない“超リアリズム”――。それらが縫い合わされた結果、現時点の個人的感触を紐解くとしたらこうなる。

 モウリーニョはモウリーニョ、それでもイブラ、ポグバ、ムヒタリアンらの個の発現が途切れず突っ走れば、ユナイテッドに分は残るだろう。が、一筋縄ではいかないペップの深謀遠慮とコンテの巧みな劇場型指揮官演技力が、虎視眈々とそのすきを窺いつつ、昨季の1位、2位、レスターとアーセナルの暴れ具合も絡んでひと波乱もふた波乱も…。

 9月10日土曜日12時30分キックオフの“異次元”マンチェスター・ダービーは、そんな先の見えない、かつてない混戦レースの象徴的幕開けと見て然るべきではないだろうか。無論、勝ち負けはその後の“展開”に大して影響はおよぼさない。

(文:東本貢司)

【了】

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