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「正しいステップなら、3歩以内で止められる」。守護神大国ドイツのユーロGK分析

text by 中野吉之伴 photo by Getty Images

実践的なコーチングのできる状況が非常に大切

 この練習自体を否定しているわけではない。だが盲目的にルーティンワークのように繰り返し行うだけではなく、本当に試合で起こりうる動き・プレーにはどんなものがあり、それをどのように練習に落とし込むのかを考えなければならないと訴えているのだ。

 ダニエルはさらに続ける。

「GKのトレーニングには監督の理解が大切なのだ。よくフィールドプレーヤーだけでパス回しやボールキープの練習をして、その間GKはGKコーチのもとで別メニューという形がとられる。GKの練習になるためにGKコーチはシュートがうまいことが求められている傾向があるが、GKコーチはシュートマシーンではない。コーチなのだ。

 つまり重要なのはコーチングなのだ。そうであるならば、トレーニング中からボールの位置次第でのポジショニング、味方選手への声かけ、飛び出すタイミングなどと実践的なコーチングのできる状況が非常に大切になる。それこそがGKコーチの大事な仕事なのではないか」

 他国がうらやむGK大国のドイツだが、それでも現状に満足しているわけではない。改善できるところはまだまだあると様々な取り組みを積み重ねている。GKだけではなく、ドイツをブラジルW杯優勝に導いたタレント育成プロジェクトもさらにチューンナップが施されている。だが、彼らの出発点はいつでもシンプルだ。ピッチの上で起こる現象から掘り下げていく。サッカーはどこまでいってもサッカーなのだ。今の日本に一番大切なのはそのことではないだろうか。

(取材・文:中野吉之伴【ドイツ】)

【了】

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