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日本人はフィジカルが「弱い」のか? 当たりのタフさだけではない、「強さ」を構成する要素【サッカー用語の基礎知識】

シリーズ:サッカー用語の基礎知識 text by 実川元子 photo by Getty Images

クロップ監督vsフィットネスコーチの論争

 サッカーのプロチームにおいて、選手が90分間(ときには120分間)、持てるテクニックを十分に発揮できるようにフィジカルコンディションを整え、怪我をしない体づくりを担う人は、日本ではフィジカルコーチと呼ばれているが、英米ではフィットネス(fitness)コーチと呼ばれる。

 フィットネスには健康、適合性という意味があることを考えると、アスリートの健康状態を整える役目を担う人材はフィットネスコーチのほうがしっくり来るかもしれない。ちなみにフィジカルフィットネス=身体の良好な健康状態は、アスリートにとって当然ながら基盤となる要素であり、近年スポーツ科学でさまざまな研究が進んでいる。

 先日、リヴァプールのユルゲン・クロップ監督に対し、オランダ人の元フィットネスコーチのレイモント・フェルヘイエンが、怪我をする選手が多くてリヴァプールの成績が今ひとつ伸び悩んでいるのは、クロップ監督が選手に課している強度の練習のせいではないかとTwitterに書き込み物議をかもした。

 問題となったツィートはこうだ。「(クロップは)発想豊かな監督だ。プレースタイルを進化させることにおいて優れている。だがピリオダイゼーション(スポーツ医学において体系的にトレーニング計画を立てる手法)の原則をわかっていない」

 それに対しクロップ監督は、「練習が酷いとか言われたけれど、怪我人が多いのは練習の強度ではなく、プレミアリーグの過密スケジュールのせいだ」と反論している。

 試合で発想豊かに編み出した優れた戦術を披露できるよう選手を練習させたい監督と、試合で選手が持てる技術的、身体的能力を100%発揮できることを考えたい、だから疲労回復のために休むことも重要と考えるフィットネスコーチの論争(?)である。過密日程をどう乗り越えるか? たとえ試合の間隔が2日半しかなくても、いつも通り練習するのか? それとも練習メニューを軽くして疲労回復をはかるべきなのか? 監督とフィットネスコーチの意見調整が重要となるところだ。

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