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セリエA 7年前

戦術がぶつかり合ったミラノダービー。インテル新監督が見せた緻密さとミランで絶対的地位を確立したスソ

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

インテルが陥った2つの不測の事態

スソ
2ゴールを決めたミランのスソ【写真:Getty Images】

 特に、チリ代表でのプレーが評価されてCB起用されたガリー・メデルは、鋭い出足のインターセプトでバッカにボールを触らせず、また着実なカバーリングでゴール前に相手選手を進ませなかった。

 一方のピオーリ監督によれば、「メデルのCB起用は攻撃面を考えてのことでもあった」という。最後尾の彼からは正確なパスが放たれ、ビルドアップのスピードが上がる。こうしてイバン・ペリシッチやアントニオ・カンドレーバに素早くボールが入り、最終ラインからは2、3本の展開でゴールに行くような攻撃でミランを押し込む。このスピード感は、前任のデ・ブール時代にはなかったものだ。

 しかし、この勢いは2つの局面で崩れた。まずは、そのメデルが故障で交代を余儀なくされたこと。37分に投入されたジェイソン・ムリージョは、ポジショニングに乱れを見せる。ミランはそこを突いて危険なカウンターを繰り出し、2度目で前半43分の先制点に結びつけている。

 もう一つは、ミランの右ウイングにスソがいたことだ。サイドのスペースも消されてカウンターを繰り出すのが難しい状況ながら、彼だけは巧みに位置を取りつつ攻撃の流れを作った。

 インテルの左SBクリスティアン・アンサルディの視野から逃れ、スペースを使ってイニャツィオ・アバーテやユライ・クツカとの連携でボールを運ぶ。完全にアンサルディを翻弄した彼は、カットインから振り幅の小さい左足のシュートで先制ゴールを決めた。

 こうなれば、ミランはスソを軸に攻め立てるのみだ。虚を突かれてカンドレーバに同点ゴールをねじ込まれた後の後半13分、スソはアンサルディをあっさりとかわして前線にパスを出し、右サイドに流れたバッカへ通したのちにあっさりとインテルDFラインの間のスペースへ移動する。

 そしてゴール前でフリーになってリターンを受けると、ムリージョをかわしてシュートをねじ込む。これで5ゴール目。劣勢の中で攻撃を組み立て、得点へと絡むプレーぶりは、今のミランでの絶対的な立場を雄弁に物語るものだ。

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