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Jリーグ 7年前

群馬、成長なき1年。「堅守速攻」も名ばかりで“荒療治”の補強も奏功せず【2016年Jリーグ通信簿】

今シーズンのJ2も全日程が終了した。この1年を振り返り、各クラブはどのようなシーズンを送ったのだろうか。今回は、17位でシーズンを終えたザスパクサツ群馬を振り返る。

シリーズ:2016年Jリーグ通信簿 text by 編集部 photo by Getty Images

瀬川移籍でまたも主力流出。クラブは将来に向けて明確なビジョンを

瀬川祐輔
来季はJ1大宮へ移籍する瀬川祐輔【写真:Getty Images】

 J2が22チーム、42試合制になって5年。ザスパクサツ群馬は毎年同じようなシーズンを過ごしているといっていいだろう。降格という言葉を意識しながらも実際にそうなることはなく、上を見て戦うことのできる順位でもない。クラブとして成長しているとは言い難い。今シーズンも17位に終わった。

 就任2年目の服部浩紀監督の狙いは堅守速攻。聞こえはいいものの、守備から攻撃への切り替えなどチームとしてどのように戦うのかという狙いは見えなかった。

 攻撃は瀬川祐輔と山岸裕也という大学生コンビの個人技や閃き、左サイドバックとして長期離脱するまでフル稼働していた高瀬優孝のクロスに頼った。

 守備面ではシーズン途中に長野パルセイロから獲得したパク・ゴンがCBとして定着。ボランチに中村駿が台頭し、松下裕樹とコンビを形成。高瀬離脱の穴を坪内秀介が埋めてシーズンを乗り切った。

 瀬川、山岸、そしてシーズン中盤にボランチのレギュラーとして定着した中村駿。今シーズンはこの3人がいなければ、降格争いに巻き込まれるだけでなく降格していた危険性もある。大卒ルーキー3人に救われたシーズンだった。

 そのうちの一人である13得点13アシストと総得点52のうちのちょうど半分に関与した瀬川が、昨年の江坂任と同様に大宮アルディージャへの移籍が決定。この穴はあまりにも大きく、早急に手当てをしなければならない。

 大卒トリオに頼るチームを作りになったのは現場だけでなく、フロントにもこの状況を招いた大きな責任がある。背番号8、9と高い期待を寄せられたチアゴとボカは途中退団、チームを根本から立て直すために行った「大量獲得、大量放出」という荒療治も功を奏したとはいえない。

 2014年にはスタジアムがJ1仕様に改修され、来シーズンにはクラブ専用ではないものの、念願の天然芝のグラウンドがある練習拠点が完成する。このように行政の支援もあり、ハードの面は整ってきている。

 今季は群馬よりも後にJリーグに加盟したファジアーノ岡山が昇格プレーオフに進出を達成した。同じような繰り返しはもう避けなければならない。瀬川、中村、乾、吉濱といった主力に加え服部監督、衛藤ヘッドコーチの退任も決定。

 どのようなクラブを目指すのか、数年先を見据えたビジョンを描くことはできるのかが問われる2017年となる。

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