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レアルの“えげつなさ”。豪華スター共演の裏にある指揮官ジダンの塩梅【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

セットプレーという飛び道具。ラモス活かすクロースのキック

 ジダン監督がハーフタイムにねじを巻いたのだろう。後半のBBCは目の色を変えてハイプレスを実行するようになった。ジダンは細かい指示でスタープレーヤーに疎まれるようなマネはしない。しかし、ここというときにはBBCに守備を強要することができる。

 現役時代も普段は物静かで温厚なのに、突然全く別の顔をみせることがあった。06年ワールドカップ決勝での頭突きによる退場が典型だが、監督としてもそうしたふり幅の大きさがあるのかもしれない。たぶん、やさしくて物分りがいいだけの監督ではない。

 レアルのハイプレスは50分に実を結ぶ。ミスを誘ってCKを得ると、51分にラモスがヘディングシュートを決めて1-1とする。さらに58分にもCKからラモス。メルテンスはクリアしきれずボールはゴールイン。レアルはCK2本で逆転し、トータルスコアを5-2として勝ちぬけを決定的にした。

 セットプレーからのラモスの得点力は、これまでも大事な試合でチームを救ってきた。セットプレーからの得点はキッカーの質が7割ともいわれている。クロースの存在は大きい。ピンポイントの精度、さらにスピードのあるボールを蹴る。いくら正確でも、ボールの滞空時間が長ければ守備側もラモスを妨害できるのだが、球速があるので瞬間的な高さ勝負になってしまう。ラモスの空中戦の強さは抜群だが、それを引き出しているのはクロースのボールの質だ。

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