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セリエA 7年前

“銀行員”からCL16強監督。ナポリ率いるサッリとは何者か?異色の経歴歩む頭脳派指揮官の数奇な人生

シリーズ:○○とは何者か? text by 神尾光臣 photo by Getty Images

再びセリエBクラブの監督に就任。セリエA昇格へと導きナポリへ

マウリツィオ・サッリ
エンポリ時代のサッリ監督【写真:Getty Images】

 そして2012年には、再びセリエBのエンポリから声が掛かる。サッリがキャリアを培ったトスカーナ州にある同郷のクラブとして、評判を聞きつけた格好である。そして充実した下部組織を持ち若手中心の選手編成にするエンポリの方針は、まさに緻密な指導を旨とするサッリのスタイルにも合致した。

 彼は、エンポリを2年でセリエA昇格へと導く。そして2014/15シーズン、ダニエレ・ルガーニ(現ユベントス)やミルコ・バルディフィオーリ(現トリノ)、そしてのちにナポリへ連れて行くことになるエリセド・ヒサイなどセリエA初挑戦の若手を擁して、内容で格上を食う見事な戦いぶりを見せた。 

 サッリは2015年にナポリの監督に就任して今に至るわけだが、チーム自体にも若手の多かったナポリの力をさらに引き上げることができたのは、長い下積みを通して彼自身に選手の育成能力が備わっていたからだ。現在ナポリは2020年まで契約を結んでおり、続投の可能性は高いと見られている。

 地元記者の話では、サッリは“元銀行員”というレッテルを貼られるのを好んではないという。ただそんな彼自身も「銀行員の経験を通して組織の運営ノウハウと決断力が培われた。そこはプラスアルファになっている」とラ・レプッブリカ紙のインタビューに答えている。

「グラウンドで仕事するのに結婚式に出るような格好をするのはおかしい」と試合ではジャージ姿を貫く一方、読書好きで内面の研鑽を怠らない努力家は、今後どういう成功譚を描くのか。 

(文:神尾光臣【ミラノ】)

【了】

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