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久保裕也、“覚醒の方程式”でヘントの大黒柱に。ゴールだけでない攻撃での貢献

text by 中田徹 photo by Getty Images

久保がプレーに関わる=フットボールの向上

 セットプレーからも、単独突破のドリブルからも、右足でも左足でも、咄嗟のクロスに対して胸に当ててもゴールにしてしまうのだ。「ヤングボーイズ時代はゴールを固め取りした後、ノーゴールの試合が続いたり、チャンスでシュートをミスすることが多かったりしたこともあって、今の久保の活躍にスイス人も驚いている」(『スポルト・フットボール・マガジン』誌の記事を再構築)という。まさに「覚醒」という言葉が、今の久保にはふさわしい。
 
「監督は結構、色々なシステムを試すので、その試合、そのシステム、そのポジションによって自分がやる役割も変わりますから、それに適応していかないといけない」と久保は言う。

 基本的に彼のポジションは2列目だ。3-4-2-1の場合は“2”、4-2-3-1なら“3”のあらゆるポジションで久保はプレーする。4-3-3のサイドを務める時も、サイドに張るのではなく、やや内に絞って曖昧なポジションをとる。それがチームの約束事となっており「サイドハーフでもFWでもない、微妙な位置ですね」と久保は言う。

 久保は前線で相手を背負ってポストプレーをするタイプではなく、アジリティに秀でたアタッカーだからこそヘントのシャドーストライカーのような曖昧なポジションは彼の特徴が活きるのだろう。

「ゴール前では焦っておらず、落ち着いてシュートを撃てている。それが、シュートが枠に飛んでいる理由かなと思います」(久保)

 久保が注目を集めているのは、“ゴール”という目に見える結果だけではない。実は「クムスが中盤の底で果たしていた役割を、久保がアタッキングゾーンで果たしている」という見方が出てきているのだ。4月29日付『ヘット・ニーウス・ブラット』紙は「クムスという屈指のMFが去った後、いかにヘントはビルドアップをしているのか」という分析記事を載せた。その“項目3”では「久保がプレーに関わる=フットボールの向上」という分析がされている。

「1試合あたり、久保の平均アクションは64回。これはミリセビッチ(83回)、デヤーヘレ(94回)、エシティ(101回)と比べて遥かに少ない。しかし、久保がプレーに関わってくると、非常に危険な存在になる。彼は多くのMFのように、ボールのないところで相手の裏を狙い、それがズルテ・ワレヘム戦のゴールにつながった。久保にはボールを持った時も、ドリブルやパスで引いた位置から前に運ぶ勇気がある。久保の前へプレーしようとする意欲が、ヘントの攻撃をスピードアップさせる。それは、クムスがやっていたことと少し似ている」(以上、抄訳)

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