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【戸田和幸の眼】チェルシーを躍動させたコンテのマネジメント。布陣変更が分岐点に【16/17シーズン総括】

シリーズ:16/17欧州主要クラブシーズン査定 text by 戸田和幸 photo by Getty Images, Natsuki Nakazawa

紙一重だった長所と短所…来季の注目は1トップの人選

アザール
アザールとD・コスタはチェルシーの攻撃をけん引したが…【写真:Getty Images】

 ジエゴ・コスタとアザールに関しては、守備を免除しつつも最低限のラインは作っておいて、そこをしっかり埋められる選手を配置しています。なおかつ後ろの5枚でスライドしながら奪う仕組みは、イタリアの時(ユベントスとイタリア代表)ほどではなかったですが特にアーセナルを粉砕した試合(第24節 3-1で勝利)などは(メスト・)エジルと(アレクシス・)サンチェスを完全に試合から「消して」しまったくらい素晴らしいものでした。

 攻撃もカウンターや個の力頼みではなく、これはコンテ監督が実際に話していたことですが、ボールを素早く動かしながら、そこに鋭いオフ・ザ・ボールの動きを組み込んでコンビネーションを使う速い攻めの形を作れていました。非常にレベルの高い優秀な選手が揃っていましたが、その選手の質に依存するのではなく、監督自身がきちんとしたサッカーの全体像を持って各選手の良さを引き出す仕事をしたと言っていいと思います。

 しかしながらそんなチェルシーにも弱点はありました。

 それはジエゴ・コスタの周りとアザールのところです。彼ら2人の守備面のルーズさを突いて攻撃の起点を作られ、中盤の2人(カンテとマティッチ)が振り回されてしまうとチェルシーは難しい戦いを強いられました。

 象徴的だったのはトッテナムに負けた試合(第20節 0-2で敗戦)ですが、この一戦では後方からのビルドアップも得意としているスパーズに対し、ジエゴ・コスタとアザールのエリアを上手く使わせてしまいました。その結果としてアザールのところから2本のクロスをあげられて2失点。もうひとつの弱点と呼べる「高さ」のところを巧みに突かれ、(セサル・)アスピリクエタの上でデリ・アリに2発決められました。

 今季は上に記したようなポイントを徹底的に突かれる試合はさほどありませんでしたが、新シーズンはどうなっていくのか。よりレベルの高いCLのような実力が拮抗した試合になった時、そういう弱点がひょっとしたら弱みに転じる可能性があると思っています。こういった懸念がある中、コンテ監督は攻撃での起点作りも含め、1トップをどう考えるのか。

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