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悲劇の墜落事故から9ヶ月。シャペコエンセ生え抜きDFが受け継ぐ「戦う」スピリット

世界中に衝撃をもって伝えられたチャーター機の墜落事故から9ヶ月、選手や関係者の多くを失って再建の途中にあるシャペコエンセが来日した。かつての仲間たちが遺してくれたスルガ銀行チャンピオンシップの浦和レッズ戦に臨んだ彼らの中に、ひときわ特別な感情を抱いてプレーしている選手がいた。事故の後、最初に加入したDFダグラス・グローリが秘めるシャペコエンセへの思いに迫った。(取材・文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

悲劇に襲われたシャペコエンセ。再出発は前途多難

シャペコエンセ
2016年11月28日、シャペコエンセの選手や関係者たちを乗せたチャーター機はコロンビアのラ・ユニオン近郊の山中に墜落した【写真:Getty Images】

 2016年11月28日、世界中が悲しみに包まれた。

「ラミア航空2933便墜落事故」という名前で記録されている悲劇的な惨事は、多くの人々の記憶に別の形で刻まれているだろう。コパ・スダメリカーナ決勝第1戦に臨むはずだったブラジル1部のクラブ、シャペコエンセの選手や関係者を乗せたチャーター機が、遠征先のコロンビアの山中に墜落した。

 犠牲者71人、生存者6人という大事故。亡くなった人の中には選手19人をはじめ、監督、スタッフ、クラブ幹部、同行していたメディアなども含まれていた。日本でもかつてJリーグでプレーしたケンペス(元C大阪、千葉)やクレーベル・サンタナ(元柏)、チエゴ(元京都)、アルトゥール・マイア(元川崎F)、そしてカイオ・ジュニオール監督(元神戸監督)が犠牲になったことで大きな話題となった。

 会長以下クラブの大部分を一度に失ったシャペコエンセだが、その後コパ・スダメリカーナ決勝で対戦するはずだったアトレティコ・ナシオナルからタイトル譲渡の申し出を受け、8月のスルガ銀行チャンピオンシップで来日を果たすことになる。

 しかし、これまでの再建の道のりは決して平坦ではなかった。リーグや競合クラブから「3年間降格なし」「選手の無償レンタル」という申し出を断り、プリニオ・ダビ・デ・ネス・フィーリョ新会長の下で再出発を図る。

 新チームが始動した1月初旬の時点で、墜落事故当時に在籍して生き残っていた選手たちのほとんどが退団あるいは移籍という形でシャペコエンセを去っていた。残留したのは元アビスパ福岡のモイゼス・リベイロとベテランFWのネネン、アルゼンチン人FWアレハンドロ・マルティヌッキオ(その後退団)、そして事故から生還してリハビリ中のネットとアラン・ルシェウの5人のみだった。

 まずは最低限の人数を確保するため下部組織から10人を昇格させ、バイーアの下部組織からも有望株を1人獲得。さらにレンタル移籍とフリートランスファーの選手たちを中心に補強を進め、15人と新たに契約を結んだ。

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