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万全のレアル、バルサ相手でも余裕に。度が過ぎた“メッシ依存”、噴出した弊害【西部の戦術アナライズ】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

カゼミーロのバックアップにも目途。2強は対照的な仕上がりに

 これで2試合合計は5-1。試合の趨勢からいってもバルサが逆転できる余地がない。勝負は前半で決まった。45分間のボールポゼッションはレアルの55%、先制後はバルサにボールを持たせる余裕をみせていたのに支配力で上回っていた。シュート数はレアル10本に対してバルサはわずかに1本。ほぼ一方的といっていい。

 カゼミーロに代わってピボーテに起用されたコバチッチは上々の出来。懸案だったカゼミーロのバックアップにメドがついた。パスワークに関してはカゼミーロより上。対戦相手や状況によってはコバチッチという選択は十分ありだ。あまり守備的なイメージのない選手だったが、アジリティがあって球際も強い。コバチッチのピボーテは大きな発見といっていいだろう。

 ルーカス・バスケス、ベンゼマ、アセンシオの3トップは誰も守備をさぼらない。ロナウドやベイルを起用したときにはない守備の強度が期待できる。この3枚セットとコバチッチでバルサを完封できたのだから、もうロナウドもカゼミーロも絶対とはいえないわけだ。つまり選手層とオプションがより多用になり、シーズンを戦う準備は早くも万全といっていい。

 一方、バルサはライバルのレアルに対して完全に出遅れた。ネイマール移籍前のプレシーズンマッチでは、いつになく早い仕上がりをみせていたが、ここに来てチームの再構築を迫られている。獲得が決まったパウリーニョはおそらく何の助けにもならない。必要なのはメッシと協調しながら仕掛けとフィニッシュのできるアタッカーだ。すべてはコウチーニョとデンベレが来てからのスタートになる。

 攻撃の仕掛けをメッシ、ネイマール、イニエスタの個の力に依存してきた弊害が露呈していた。バルサは定期的にメッシ依存症に陥る。ネイマールとスアレスの獲得で一時は依存から脱却したが、昨季はやはりメッシ頼みに戻っていた。

 あれだけ巨大な才能を持っていて依存するなというのが無理なのだ。しかし、度が過ぎれば他の選手に必ずひずみが生じる。それをどう人為的に解消するかがバルサの監督に求められる手腕である。ネイマール移籍で一気にメッシ依存に傾いたチームをバルベルデ監督は早急に修正する必要がある。

(文:西部謙司)

【了】

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