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代表 6年前

必然だったイングランド育成年代の躍進。積極的なインフラ整備、覇権奪回へのシナリオ

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

国立フットボールセンターの完成が転機に

イングランド代表
セント・ジョージズ・パークは広大な敷地に充実の設備を誇る世界屈指のトレーニングセンターだ【写真:Getty Images】

 しかしイングランドは前述のとおり1990年代終わりから改革に取り掛かったものの、長らくとして結果として表れなかった。フランスを見習って「ユース育成に力を入れる」いうぼんやりとした目標を掲げた一方で、具体的に方針として形にできていなかったために、遅々として進展しなかったという見方もある。同時に、選手と指導者を育てるためとして、イングランド中部にサッカー専用の特大施設建設を目指したが、資金不足や度重なる上層部の人事交代などが原因で計画がとん挫し続けた。

 だが2012年、ついに世界レベルのサッカー選手と指導者を育てる国際的なサッカー教育の場として、セント・ジョージズ・パーク・国立フットボールセンターが完成。そこから状況が好転し始める。

 1997年にイングランド・フットボール協会(FA)のテクニカル・ディレクターに就任したハワード・ウィルキンソンは、国立フットボールセンター建設計画に携わり、そして現在のイングランドのユース組織の礎を築いたとされる男である。そんなウィルキンソンが、先月末にガーディアン紙のインタビューで今年の成功を振り返り、次のようなコメントを残している。

「このサクセスは急激な変革の結果なわけではない。アカデミーの創設やセント・ジョージズ・パークの建設計画から始まった、長期的なプランが実った発展である。これらのインフラができて、自分たちの練ったプランに沿ってさらに事が進み、その恩恵が今の成功にある」

 インドの地でU-17代表をW杯優勝へと導いたスティーブ・クーパー監督もウィルキンソンに同調し、優勝後のインタビューでは、「『プランニング』がキーワード。セント・ジョージズ・パークは、色々な意味で大きな助けになった。いろいろな人を一体にさせてくれる。(2012年からFAのテクニカル・ディレクターに就いた)ダン・アシュワース、マット・クロッカー(FAヘッド・オブ・ディベロップメント・チーム・コーチング)やガレス・サウスゲイト(現イングランド代表監督)といった、力強いリーダーシップが存在して、トップダウンですべてのチームに同じ方向に進んでいる」と語っている。

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