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代表 6年前

必然だったイングランド育成年代の躍進。積極的なインフラ整備、覇権奪回へのシナリオ

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

若手にチャンス少ないプレミア。懸念はやはり…

 また国立フットボールセンターが完成した同年からは、プレミアリーグやフットボールリーグ(2〜4部までの下部リーグ)とともに、エリート・プレーヤー・パフォーマンス・プランを導入して、ホームグロウンのタレントづくりに動いた。ウィルキンソンも「現在の成功は、世界有数のユース教育のプロたちのおかげで、この国にそういった人間がいるという証拠でもある。彼らが世界有数のプレーヤーを育てているのだ」と語気を強める。

 確かに、U-17代表にはフィル・フォーデンやリアン・ブリュースター、ジェイドン・サンチョ、U-20代表にはルイス・クック、ドミニク・ソランケ、ドミニク・カルバート・ルインなどを筆頭に、現在のイングランドには各年代のトップクラスの選手がズラリと顔を並べる。ルベン・ロフタス=チークやジョーダン・ピックフォードなどはその少し上の世代だが、彼らも含めて将来が楽しみな逸材が多い。

 とはいえ、現在これらの若い世代の活躍を喜ぶ一方で、多くの識者は彼らの今後について懸念する。なぜなら、グローバルなビジネスとして展開しているプレミアリーグでは、国内の若手選手の出場機会が限られてしまうからである。

 英『BBC』の発表した資料によると、U-21 EUROに出場したイングランド代表の選手たちの今季10月上旬時点でのプレミアリーグでの総プレータイムは、U-21スペイン代表選手のラ・リーガでの出場時間の半分以下。同じく4強入りしたU-21ドイツ代表の選手たちのブンデスリーガでの出場時間の6割弱、U-21イタリア代表の選手たちのセリエA出場時間の7割弱となっている。

 ウィルキンソンは「アカデミーには最高の施設があり、素材も素晴らしい。ただ私たちの前には大きな壁が立ちふさがっている。出場機会の少ないのは、本当に特大な問題だ。子どもたちへの影響は計り知れず、それはA代表を見ても一目瞭然だ」と危惧する。

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