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低迷続きのイングランド、鬼門ベスト8突破に挑む。失望の歴史に終止符を【ロシアW杯全32チーム紹介】

6月14日に開幕する2018FIFAワールドカップロシア。グループリーグの組み合わせも決定し、本大会に向けて期待感は高まるばかりだ。4年に一度開催されるサッカーの祭典には各大陸予選を勝ち抜いた32チームが参加する。フットボールチャンネルでは、その全チームを紹介していきたい。今回はグループGのイングランド代表を取り上げる。(文:松澤浩三)

シリーズ:ロシアW杯全32チーム紹介 text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

ようやく見えた希望の光。サウスゲイトだからできた抜擢

イングランド
イングランド代表は大黒柱のケイン(中央)、覚醒中のスターリング(左)、たくましさを増したダイアー(右)らを中心にW杯へ【写真:Getty Images】

【イングランド代表】
FIFAランキング:15位(2017年12月)
監督:ガレス・サウスゲイト(2016年~)
6大会連続15回目の出場
最高成績:優勝(1966年イングランド大会)
欧州予選グループF 1位通過

 前回のブラジルW杯ではグループリーグを突破できずに敗退、2016年のEUROでは決勝トーナメント1回戦で伏兵アイスランドの軍門に下るなど、イングランド代表はビッグトーナメントで低調なパフォーマンスばかりが目立つ。とはいえ、これはつい最近始まったわけではない。

 国際大会で準決勝に進出したのは自国開催のEURO1996が最後で、以降は低迷が続いている。デイビッド・ベッカム、スティーブン・ジェラード、フランク・ランパード、ウェイン・ルーニー、リオ・ファーディナンド、ジョン・テリーなど、ワールドクラスの選手を多く擁した「黄金世代」とされた2000年~10年代序盤のスカッドでさえも、ベスト8の壁を破ることができずに、最終的にはいつもファンを失望させてきた。

 また2016年9月下旬には、そのおよそ2ヶ月前に就任したばかりのサム・アラダイス監督が、『テレグラフ』紙の行ったおとり取材での不適切な発言の責任を取り退任。当時U-21イングランド代表監督を務めていたガレス・サウスゲイトが、急きょ繰り上げでA代表の指揮官に就任するなどのドタバタ劇もあった。こういったお家騒動もイングランド代表では、日常茶飯事だ。

 サウスゲイト監督が大半の指揮を執ったロシアW杯欧州予選では、グループの組み合わせに恵まれて8勝2分。余裕でトップ通過を果たした一方、格下のチームばかりを相手にしながら、創造力や力強さはなく、目を覆いたくなるような内容の試合も少なくなかった。

 指揮官が志向するのはイングランドの伝統「キック&ラッシュ」や4-4-2を採用しての「サイド攻撃」ではない。より現代的で魅力的な、GKから試合を組み立てるポゼッションサッカーである。とはいえ、W杯予選の試合を見ただけではそんな印象はまるで受けなかったし、本音を言えば、目指しているサッカーさえも分からなかった。監督本人も「予選の間も選手たちに話をして、練習ではある程度成果は出たが、試合になるととんと違ったサッカーになってしまう」と首を捻ったほどだった。

 だが直近の親善試合ではドイツとブラジルを相手に健闘した。当初の招集メンバーからはハリー・ケイン、デリ・アリ、ラヒーム・スターリング、ジョーダン・ヘンダーソンといったレギュラークラスの選手が立て続けに怪我を理由に辞退。すでに小粒感のあったスカッドがさらに貧弱になり、国内の人々が代表に寄せる期待度はより低下していた。

 しかし蓋を開ければ上々以上の出来で、特にドイツ戦は数年来の好パフォーマンスだった。ピッチに立った選手のほとんどの代表歴が浅く、先発イレブンの総代表キャップ数は101。平均年齢こそ25歳弱だが、1980年以来の最少キャップ数で、中でも活躍したのはルベン・ロフタス=チーク、ジョーダン・ピックフォード、ジョー・ゴメスなど、プレミアリーグでの経験すらほとんどない若手ばかり。常連選手の辞退はあったとはいえ、A代表バトンを受け取るまで3年間にわたりU-21代表を見てきたサウスゲイト監督だからこそ、今回の抜擢ができた。

 ドイツ戦では、代表デビュー戦で10番を背負ったロフタス=チークを中心にパスサッカーを展開、指揮官の目指すサッカーが垣間見えた。同じくデビューを飾ったGKのピックフォードから始まり、ジョン・ストーンズやハリー・マグワイアといったDF、さらにゲームキャプテンを務めた守備的MFのエリック・ダイアーを経由して、ロフタス=チークがサイドを駆け上がるウィングバックのキーラン・トリッピアーやダニー・ローズ、さらに前線へとパスを捌く。ゴールはなかったが、選手が素早く動きまわるスピーディーなサッカーは、久々に期待を募らせる内容だった。

 とはいえ、一方のブラジル戦は防戦一方で限界を感じさせた。ドイツ戦と同じ0-0のドローだったが、ブラジル戦ではまるで策がなく、焦りを見せた選手にはミスも目立った。特にゴールを守ったジョー・ハートは高い身体能力を駆使してファインセーブを見せた半面、ポジショニングの悪さ、さらにパスサッカーへの順応力の低さが顕著で下り坂の印象をさらに強くした。

 また前半途中にロフタス=チークが負傷退場すると、もともとよくなかった攻撃のリズムがさらに悪化。クラブレベルでレギュラーを獲得しておらず、代表では2キャップ目の選手に多くを求めなくてはならない、層の薄さも感じさせている。最低でも、11月に招集されたスカッドではそうだった。

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