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現バルサ指揮官バルベルデのサッカー哲学。スターのエゴとグループが調和する神秘【インタビュー】

text by アイトール・ラグーナス photo by Getty Images

膨大なデータが適用されるようになったフットボール

――扱える情報が氾濫している状況でも、フットボールはパンセリの“予期できないダイナミックス”であり続けています(※)。なぜ、このスポーツはこんなにも予想がつかず、計画通りに行かないのでしょうか?

※アルゼンチンのスポーツジャーナリスト、ダンテ・パンセリ(1921?1978年)が1967年に著した名作『FUTBOL, DINAMICA DE LO IMPENSADO(フットボール、予期できないダイナミックス)』のこと。

V フットボールは人生と同じで、明確なものではないということだ。完璧だと思えて獲得した選手でも、チームに加わった2日後に間違いだったと気づくことがある。その反対に、戦力に数えていなかった選手たちに感服することだって。

 競争は、最後には自分を然るべき位置に据える。ただ今は前よりもしっかり働くようになったし、スポーツディレクターたちは見事な仕事ぶりを見せている。セルタ、ビジャレアル、セビージャ、エイバルの補強を見ていると……、素晴らしい仕事を実現しているね。

――フットボールは膨大なデータが適用されるようになりました。ですが、それを読み取ることのできる人物が必要です。

V まったくもってその通り。自分の必要性に応じた有効なデータを取り出すというのは、じつに難しい。2013年、新サン・マメス(アスレティック・ビルバオの本拠地)最初の試合での出来事を語らせてもらおうか。

 ゴール裏スタンドの一つがいまだ工事中で、そこは壁になっており、私たちはそうした状態で1年間プレーすることになった。だからアシスタントのホセバ・エチェベリア、ジョン・アスピアスと、より多くの得点を決められるのはどちらのゴールか議論し始めたんだよ。

 普通ならば、スタンドのある方だと考えるだろう。そうして、私たちはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授、ナチョに相談することにした。

「なぜ、その質問が私の中に湧いてこなかったのだろう、素晴らしい!」なんて感嘆の声を上げていたっけね。彼はラージョをモデルケースとして、あらゆる要素を分析していった。それこそが計量経済学の作業であるわけだ。

 前半、後半、最初に決まる得点、マドリーとバルサ相手の得点……、彼はすべてを採取して“マシーン”に詰め込み、それから私たちに結果を持ってきた。

――結果は、どのようなものだったのですか?

V それが、壁のあるゴールの方でより多くの得点が決まっていた(笑)。そんなことが役立つのか? 優先的に攻撃すべきゴールがあるのかを把握できるわけだ。

選手たちにそのことを話してみると、彼らは壁相手の方が得点を決められるならば、まずそうやって点を決め、ハーフタイム後に観客と一緒に追加点を狙いたいと言っていた。

悪くはなかったよ。何となれば、私たちはチャンピオンズリーグの出場権を獲得したんだから!

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