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「小さすぎる」偏見を覆したメルテンス。ペレ、マラドーナらの系譜、“ナノレベル”の要求に応える能力【西部の目】

幼き日のドリース・メルテンスは小柄な体格を理由に冷遇された。しかし、後にその類まれな能力が認められ、現在はワールドクラスの仲間入りを果たしている。ペレ、マラドーナ、メッシと歴史に名を残すスターは決して身長が高くない。ナノレベルのプレーが求められるナポリにおいても、ベルギー代表アタッカーは不可欠な存在だ。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

小さな巨人

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ドリース・メルテンス【写真:Getty Images】

 身長169センチ。10歳でアンデルレヒトにスカウトされて下部組織で5年間プレーしたが、「小さすぎる」という理由で放出された。次のヘントでも「プロでやれるフィジカルがない」として3部リーグのエンドラハト・アールストへ。そこで年間最優秀選手賞に選出される活躍でオランダのAGOVV(2部リーグ)へ移籍した。

 アンデルレヒトでもヘントでも、ドリース・メルテンスのテクニックとセンスは認められていた。しかし体が小さいために「プロでやれない」と見切りをつけられた。実はこれ、スタープレーヤーの伝記に非常によく出てくる話である。そもそも歴代のスーパースターに長身選手はむしろ少ない。ペレは171cm、フェレンツ・プスカシュ172cm、ディエゴ・マラドーナは165cm、リオネル・メッシ170cm。1977年のバロンドール受賞者であるアラン・シモンセンは165cmだった。少なくてもアタッカーに関しては小さい選手のほうが有利といっていいぐらいなのだ。

 空中戦を除けばボールは下にある。技術と俊敏性のほうが決定的で、身長の高さにはほとんど優位性がない。フィジカルコンタクトは大きな選手のほうが有利だが、体を当てられる前にすり抜けるか、体幹の強さで対抗すれば体格の差はカバーできる。

 オランダの2部リーグで大活躍したメルテンスは強豪クラブのユトレヒトへ移籍し、さらに3強の一角であるPSVアイントホーフェンへ、2013年にはイタリアの名門ナポリへ移籍した。

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