モドリッチを別格たらしめる武器。時を操るリズム、自在の「前足」に凝縮された凄み【西部の目/ロシアW杯】

 ロシアワールドカップ・グループリーグD組は実力国が揃ったが、クロアチアは3連勝で首位通過を果たした。中心はルカ・モドリッチ。第2節のアルゼンチン戦では特筆すべきワンプレーがあった。相手のタイミングを外し、味方を生かす。決勝トーナメントでも世界最高のMFは時間を操作する。(文:西部謙司)

2018年07月01日(Sun)15時30分配信

シリーズ:西部の目
text by 西部謙司 photo Getty Images
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絶妙のアウトサイド

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ルカ・モドリッチ【写真:Getty Images】

 グループリーグD組第2節・クロアチア対アルゼンチンの51分、ルカ・モドリッチの素晴らしいプレーがあった。アルゼンチンが左サイドのスローインからゴールライン際まで攻め込み、メサがペナルティーエリア外にいたペレスへプルバックした。しかし、モドリッチがこのパスを読んでいて、素早いスプリントからパスをカットする。しかも、ペレスに寄せきられる寸前にダイレクトで前方へフィードしてカウンターアタックをセットした。パスを受けたレビッチは一気に加速、たまらずアルゼンチンがファウルで止めた。そのまま抜け出していれば決定的なチャンスになっていた。

 このワンプレーにはモドリッチの凄さが凝縮されている。まず、モドリッチは相手のパスコースを読んでカットした。この読みが素晴らしい。ただ、体勢はかなり難しかった。ペレスが猛烈に詰め寄せてきている。ボールは自分の左側から来る、相手は右側から来る。ボールを見れば敵が見えない、敵を見たらボールを見失う。非常に「食われやすい」状態だった。しかし、モドリッチは間接視野で敵をとらえながらステップを踏み換え、右足のアウトサイドでタックルされる寸前にダイレクトで正確なパスをレビッチへ出した。

 モドリッチがボールに触った場所はペナルティーアーク付近、ペナルティーエリアの中にはフリーの味方がいた。そちらのほうが視野もあるし、バックパスして味方に蹴らせるほうがイージーだったと思う。しかしモドリッチはそうしなかった。難しいほうを選択した。その勇気と自信が別格だ。

 さらに一瞬でレビッチとレビッチ周辺の敵の状態を観察していた。だからこそ、1回バックパスをするのではなく「このタイミング」を逃さなかったのだろう。ボールに触る寸前までモドリッチはバックパスできる体勢にあった。おそらくアイデアを変えたのはボールに触れる一瞬前だと思う。レビッチに出せばチャンスになると判断し、とっさに右足のアウトサイドで面を作って前方へ弾いた。このアウトサイドの使い方も独特だ。

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