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武藤嘉紀に14億円。「買い渋り」のオーナーが投資した意味とは? 古豪復権へ求められるもの

text by 山中忍 photo by Getty Images

倹約オーナーが武藤に投資した意味

 今季はプレミアリーグ復帰2年目。昨季の最終成績は10位だが、終盤30節あたりまでは残留争いの危険な匂いを断ち切れずにいた。泣き所だったのは得点力不足。リーグ戦の得点数は、順位表ですぐ下に並んだ4チームよりも少ない「39」にとどまった。堅守を前提とするベニテスのチームらしく、守って辿り着いた中位だった。昨季のチーム年間最優秀選手には、キャプテンマークもつけて統率力を発揮した、センターバックのジャマール・ラセルズが選ばれてもいる。

 それだけに、武藤に寄せられる期待、そして新ストライカーとして背負う責任は大きい。950万ポンド(約14億円)の移籍金自体は、プレミアリーグの基準からすれば、まだ26歳のFWとしては「廉価」とさえ言える規模ではある。

 しかし、ニューカッスルの英国人実業家オーナーであるマイク・アシュリーは、財布の紐が固いことで有名。ベニテスが契約延長に乗り気でないのも、2年半前の就任直後から不満が募る補強不足が最大の理由だ。武藤の獲得費用は、タイミングを前後して実現したアレクサンダル・ミトロビッチ売却(フルアム移籍)で十分に賄われているとはいえ、「買い渋り」クラブにとってはそれなりの金額が、国際的には無名に近い日本人ストライカーに費やされたことになる。

 経営陣もファンも“リターン”を求める武藤の立ち位置は、「1トップのオプション」といったところだろう。昨季前半戦に2トップが試されてもいるが、攻守のバランスを重視するベニテスは4-2-3-1を基本システムとするシーズンが続いており、慎重派という側面からしても、開幕からシステム変更に踏み切るとは思えない。

 但し、「オプション」と言っても、単なる「控え」という意味ではない。強豪相手の対戦時など、守備を意識しながら攻撃は早めにセンターFWに当てる試合では、ウェストブロムウィッチからレンタルで獲得されたサロモン・ロンドンが1トップを任されるだろう。プレミアでも実績のあるターゲットマンは、身長189cm体重85kgとフィジカルでも武藤に勝る。昨夏に獲得されたセンターFWホセルの持ち味も、最前線で焦点となって味方を呼び込むプレーにある。

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