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武藤嘉紀に14億円。「買い渋り」のオーナーが投資した意味とは? 古豪復権へ求められるもの

ロシアワールドカップにも出場した日本代表FW武藤嘉紀が、ニューカッスル・ユナイテッド移籍でプレミアリーグの門をくぐった。ブンデスリーガで3シーズンにわたって実績を積み重ねたストライカーが加わるのは、どのような風土のクラブなのだろうか。そして地元のファンやチームからはどのような活躍が期待されているのだろうか。(文:山中忍)

text by 山中忍 photo by Getty Images

武藤、英国屈指の熱狂的なクラブの一員に

武藤嘉紀
武藤嘉紀がニューカッスルに加入。今季からプレミアリーグに参戦する【写真:Getty Images】

 武藤嘉紀は幸せな男だ。数あるイングランドのスタジアムの中でも、最も魅力的な1つであるセント・ジェームズ・パークを、プレミアリーグの選手として「ホーム」と呼べるのだから。

 イングランド北東部に位置するニューカッスルの市内中心部から、上り坂の道を歩いて15分ほどの距離にあるセント・ジェームズ・パークは、地元にプロクラブが1つしかない“ワン・クラブ・タウン”の聖地。その美しさは、白を基調とした堂々たる佇まいだけではない。情景の一部を成す観衆の熱意も国内随一だ。

 2部リーグでの9年前にも1試合平均で4万人を超すファンが集結したホームは、やはりプレミアリーグから落ちていた一昨季、ラファエル・ベニテス体制継続で即刻返り咲きへの機運が高まったこともあり、リーグ戦の度に満員に近い約5万1000人で埋まった。

 この地元民の信心の厚さは、ニューカッスルが「勘違いの世界」と言われる理由でもある。ファンにチームの実力以上の期待を抱いて盛り上がる傾向があるのだ。

 武藤自身もクラブ広報経由での入団メッセージで「ビッグクラブ」と表現していたが、厳密に言えば「古豪」。4度のトップリーグ優勝歴を誇るが、前回は91年前の出来事だ。1992年からのプレミアリーグでは、2年連続で2位につけた1995〜97年が最盛期。国内第2の栄誉であるFAカップ優勝も1955年が最後で、現役強豪の「身分証明書」とも言えるチャンピオンズリーグ(CL)出場権は、今世紀初頭の2度しか手にしていない。

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