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元リバプールDF、不治の難病で現役引退。29歳の若さで…支援の輪も広がる

text by 編集部 photo by Getty Images

スティーブン・ダービー
リバプール出身のDFスティーブン・ダービーが難病を発症し29歳で現役引退【写真:Getty Images】

 イングランド2部のボルトン・ワンダラーズは18日、元U-19イングランド代表DFスティーブン・ダービーの現役引退を発表した。

 リバプールの下部組織で育ち、トップチームでの公式戦出場経験も持つダービーだが、29歳の若さでスパイクを脱ぐことになった。引退の理由はなんと、運動ニューロン疾患だという。

 運動ニューロン疾患とは、かつて「アイスバケツチャレンジ」で注目された筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめ、原発性側索硬化症(PLS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症などが代表的なものとして知られる。

 最も一般に知られているALSは有効な治療法が確立されておらず、現時点で薬で進行を遅らせることしかできないとされている。症状としては主に筋萎縮や筋力低下が見られ、呼吸障害なども起きることがある。患者の50%は発症後3年以内に亡くなり,5年以上生存できるは20%,10年以上生存するのは10%とも言われている。

 ダービーの症状について詳細は明かされていないが、昨季ボルトンに加入してから発症したものと見られる。最後の公式戦出場は昨年12月16日のバートン・アルビオン戦だった。それ以降はベンチ入りが2試合あるのみだ。

 リバプールのトップチームで公式戦6試合に出場した実績を持つダービーは、いくつかの下部リーグクラブへのレンタル移籍を経て2012年にブラッドフォードへ完全移籍。3部や4部にはなるが、ボルトンへ移籍するまでの5シーズンで公式戦200試合以上に出場して研鑽を積んだ。

 クラブを通じてコメントを発表したダービーは、「引退を表明するのには大きな悲しみが伴う」とし、「ボルトン・ワンダラーズのチームメイト、フィル・パーキンソン監督、そしてスタッフ全員が、自分と自分の家族にとって難しい時期も素晴らしいサポートをしてくれたことに感謝したい」と述べた。

 そして「現時点ではプライバシーを守りたい。この先に待っている戦いに適応でき、近しい人々と時間を過ごすつもり」と病と闘っていく姿勢も示した。

 パーキンソン監督は「スティーブンとその家族にとって胸が張り裂けるようなニュースであり、クラブに関わる皆の思いはステフとともにある。彼は素晴らしいプロフェッショナルで、魅力的な人間だ。(中略)ボルトンのファンはファーストチームでの出場機会が限られていたために彼のベストをあまり見られなかったかもしれないが、昨季の戦いに大きく貢献していたのは誰もが保証できる」と引退という決断を下さざるをえなかったダービーを称賛した。

 ダービーの突然の引退には、かつてのチームメイト達からも悲しみの声が寄せられている。そして古巣であるリバプールも、下部組織出身の同選手と家族へのサポートを即座に表明した。イングランドプロサッカー選手協会も支援の意思を明かし、その輪は大きく広がりを見せている。難病と闘う29歳の第二の人生が明るいものであることを祈るばかりだ。

【了】

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