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知られざるモドリッチの幼少時代。小さな巨人はいかにして生まれたのか? その背景にある“故郷”

text by ビセンテ・アスピタルテ photo by Getty Images

古のダルマチアから道を切り開く

ルカ・モドリッチ
モドリッチは、古のダルマチアから世界的な選手への道を切り拓いていった【写真:Getty Images】

 とどのつまり、ダルマチアの住民は厳格さと勇敢さを混ぜ合わせた、とても興味深い遺伝子の持ち主であり、その人生では自らを犠牲にして、厳しい姿勢で働くことを厭わない。そのために高レベルのアスリートたちが生まれる果樹園となったわけである。

 ダルマチア最大の都市スプリトでは、クーコッチ、ヴラシッチ、バリッチ、ディノ・ラジャが育った。シベニクの通りでは水球の伝説ペリツァ・ブキッチ、ペトロヴィッチ兄弟がチャンピオンとなることを夢に見て、晴れわたったドゥブロヴニクではクロアチア水球の大多数の選手たち、またアンテ・トミッチやマリオ・ヘゾニャらバスケットの価値ある選手たちが成長を遂げた。

 そしてザダールについては、特筆に値する。小さなモドリッチがスポーツマンとして歩み始めたその場所は、わずか7万5000人の人口から6人もの五輪メダリストを輩出したのである。

 欧州の選手で初めてFIBA殿堂入りを果たし、バスケットボール界のトップに君臨した伝説クレシミール・チョシッチを皮切りとして、ゾラン・プリモラッツ(卓球)や、イヴァン・ニンチェヴィッチ、ヴァルチッチ、ヨシップ&トンチ兄弟(いずれもハンドボール)が、それぞれのキャリアで栄光をつかんだのだった。

 この極まった困難とスポーツ文化の温床で、ルカ・モドリッチはその人生を歩み始めた。壮絶な逆境の中で、しかし壁を壊していく覚悟を持って。実際、フットボールの世界的スターとなるための壁は、決して少なくなかった。才能と意思の強さを持ち合わせる新たな模範的存在が、古のダルマチアから道を切り開いていったのである。

(文:ビセンテ・アスピタルテ、ホセ・マヌエル・プエルタス/翻訳:江間慎一郎、再構成:編集部)

【了】

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『ルカ・モドリッチ 永遠に気高き魂』

発行:株式会社カンゼン
定価:本体1700円+税

先のロシアW杯でクロアチア代表を準優勝に導いて大会MVPに輝き、FIFA最優秀選手にも選ばれたモドリッチのすべてがわかる本格バイオグラフィー。
スペインで発売され大きな話題となり、ロシアW杯のエピソードを大幅に加えた最新版が日本初上陸。
幼少期の生い立ちから現在まで知られざる成長秘話を丹念に描き出していく。

<目次>
1.ダルマチアの才能
2.戦争難民
3.榴弾の中での練習
4.大いなる失望
5.ボスニア・ヘルツェゴビナ、成熟の証明
6.最後のレンタル移籍
7.愚か者たちのリーグ
8.スター
9.バルカン半島のクライフから、なるルカ・モドリッチへ
10.並外れたポリバレント性
11.その器、ロンドンでも収まり切らず
12.今一度、勝つ
13.疑いと批判
14.物静かな男
15.マドリーの支配者
16.司法によるレジェンドの監視
17.栄光へと続く三つの延長戦―ワールドカップMVP

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