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イタリア代表のその後。W杯逃し、「今」はどうなっているのか? “時代遅れ”の戦術に賛否も

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

イタリア代表が導入したサッリ戦術

 まず最も大きな変化は、冒頭でも紹介したとおり攻撃面での戦術が確立したことである。ショートパスを中心としたポゼッションサッカーは、10月の親善試合ウクライナ戦から形となる。好感触を得たマンチーニ監督は直後のポーランド戦でも同様の布陣をぶつけ、相手を圧倒したのちに勝利を得た。

 ポゼッションを高めて試合のイニシアチブを握るというアプローチは、かつてチェーザレ・プランデッリ監督も試みて形にしていた。当時はスペイン代表を手本にしていたが、今回は若干毛並みが異なる。似ているのはスペインというより、マウリツィオ・サッリ監督(現チェルシー)がナポリで展開していたショートパスサッカーのそれだ。

 ラインはかなり高め。そして前線から精密な間隔を保ってプレスを掛けて、相手の攻撃を限定してボールを奪ったのち、ワンタッチでショートパスを交換していく。その軸に据えるのは昨季までナポリにいたチェルシーMFジョルジーニョ、3トップの一角に据えられたロレンツォ・インシーニェも積極的に中盤に降りてボールを触る。そういったサッカーの骨格は、昨季までのナポリと全く共通であった。

 しかしこのサッリ戦術の導入は、ナポリ組だけでなく他の選手にも良い効果をもたらしている。テクニカルな選手に居場所ができたのだ。ウクライナ戦、ポーランド戦では、フェデリコ・ベルナルデスキがゼロトップ的に動いて、パスワークを円滑なものにした。

 そして中盤では、期待されながら代表ではなかなか開花しなかったマルコ・ヴェラッティが、ついに輝きを放った。

 ジョルジーニョや、かつてペスカーラ時代に同僚だったインシーニェと細かくパスを回しつつ、プレスのためのポジショニングは正確に取りながら自由闊達に動き、ゴール前では際どいところにラストパスを放って崩しを図る。卓越した技術を活かそうにも、これまでの代表では選手間が遠すぎてパス交換ができなかった。それが保証され、やっと自らのリズムでプレイできる環境が整えられたということなのだろう。

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