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アーセナルが誇る異次元2トップの脅威。EL制覇への武器、バレンシアを殺したそのクオリティ

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

完璧だったバレンシア。しかしそれを打ち砕いたのは…

 まさに電光石火の一撃。アーセナルは最も奪われたくなかった先制弾を、あっという間に献上してしまうことになった。

 あと1点を追加することができれば、2戦合計スコアで上回ることができる。そんな状況にあったホームチームは、その後もアーセナルを圧倒。グエデス、ロドリゴ・モレノらが立て続けにシュートを放つなど、いつ2点目が入ってもおかしくはなかった。

 ボランチのフランシス・コクランやダニエル・パレホが中盤の位置でボールを持てば、効果的なサイドチェンジを繰り返して相手の守備陣を左右に揺さぶった。そこから素早くドリブルやクロスを仕掛けることによって、アーセナルのDFラインが整う前にゴール前へ侵入することができたのだ。

 守備時にはCBとボランチの間のスペースをしっかりと締め、1stレグから脅威となっていたメスト・エジルが生きるエリアを確実に消した。これによりドイツ人MFはボールに触れる回数が激減し、それに伴ってアーセナル攻撃陣の強度も落ちた。前半15分時点までのバレンシアは、まさに完璧だった。

 しかし、その流れを一瞬にして変えたのがピエール=エメリク・オーバメヤンだった。17分、GKペトル・チェフからの長いボールをアレクサンドル・ラカゼットが頭でフリックすると、これに反応したオーバメヤンが右足でボレーシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。

 決してアーセナルが良い崩しを見せたわけではない。言ってしまえば、偶然そこまで押し込めただけのシーンであった。しかし、その一瞬のチャンスをもモノにしてしまうのが背番号14だった。この1点は、バレンシアに押されていたアーセナルにとっては大きなものになった。

 とはいえこの時点で2戦合計スコアは4-2。バレンシアは最低2点が必要となったが、まだ決勝進出は射程圏内だった。そのためアーセナルからしても、1点を取ったとはいえ引き続き気を引き締めることが重要だった。何よりCLではあのような奇跡が起きたのだから。この時点で、まだ勝負の行方はわからなかった。

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