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なぜ19人だけで来日? トリニダード・トバゴ代表を悩ます深刻な「ビザ問題」の内情

text by 編集部 photo by Wataru Funaki

デニス・ローレンス
記者会見に臨むトリニダード・トバゴ代表のデニス・ローレンス監督(右)と主将のカリーム・ハイランド(左)【写真:舩木渉】

 日本代表と5日の国際親善試合で対戦するトリニダード・トバゴ代表は今、深刻な問題に悩まされている。それは今回の来日メンバーが「19人」になってしまったことにも大きく関係しているようだ。

 通常ならば代表チームは23人か、それ以上で構成される。しかもトリニダード・トバゴは約2週間後にCONCACAFゴールドカップ(北中米カリブ選手権)の初戦を控えている状況で、19人での来日となった。それはなぜか、デニス・ローレンス監督が4日の記者会見で明かしている。

「今回は出来る限りゴールドカップに出場するメンバーを連れて来たいと努力した結果ということになる。(ゴールドカップ開催地の)アメリカへのビザ取得に大変苦戦している面もあり、いずれにしろゴールドカップに出場できないのであれば、日本に連れてくる意味がない。そういった理由もあって19人のみを連れての来日となった」

 ビザの問題。これがトリニダード・トバゴ代表を窮地に陥れている。ローレンス監督は来日前に国内で行われた記者会見の中で、ゴールドカップに向けてアメリカへ入国するためのビザ取得が叶っていない選手やスタッフの名前を挙げた。

 アトゥラー・ゲラ、オーバリー・デイビッド、ウィルス・プラザ、マーカス・ジョセフ、ヨエビン・ジョーンズと、フィジオセラピストのデイブ・イサアクの6人が、アメリカでの大陸選手権に参加できない見込みだという。

 しかも彼らはいずれも主力級の選手たちだ。31歳のゲラは代表通算42試合出場6得点、28歳のデイビッドは44試合に出場。ジョセフも通算13試合の出場歴があり、プラザは通算24試合出場7得点で攻撃の要の1人。ジョーンズに至っては通算68試合出場とチーム内でも屈指の経験値を誇る選手だった。

 さらに不可解なのは、そもそもアメリカでプレーしている選手にビザが発給されていない点だ。ジョーンズはMLSのシアトル・サウンダーズに、ゲラはUSL(2部相当)のチャールストン・バッテリーに所属している。他の3選手はデイビッドがコスタリカ、プラザがバングラデシュ、ジョセフはインドのクラブに所属している。

 ゴールドカップでトリニダード・トバゴ代表と同じグループに入っているアメリカの嫌がらせなのではないか…と邪推もしてしまうが、単にドナルド・トランプ政権下で入国のためのビザ発給条件が厳しくなっているだけなのだろうか。アメリカと関係の深いサウジアラビアやイスラエルのクラブに所属する選手には無事入国ビザが下りているようだ。

 トリニダード・トバゴ代表は他にも主力を欠いている。DFトリスタン・ホッジは最近、所属クラブで前十字じん帯と後十字じん帯の断裂という大怪我を負ったと、『トリニダード・トバゴ・ガーディアン』は伝えている。

 また、守備の要だったシェルダン・バテューは所属するノルウェー1部のサルプスボリが残留争いに巻き込まれていることもあって、クラブがストップをかけて来日できず。ホンジュラスでプレーする25歳のFWランデル・ウィンチェスターは息子との関係修復のために代表入りを辞退したという。

 ローレンス監督は深刻な「ビザ問題」などを抱えながら、チームをゴールドカップまでに立て直せるか。19人で挑む日本戦はそのための重要な試金石となる。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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