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エクアドル代表の全容とは? 日本代表と第3戦で激突。最大の強みと1つの不安要素を解説する【コパ・アメリカ主要国分析(5)】

コパ・アメリカ2019(南米選手権)が現地14日に開幕する。マンチェスター・ユナイテッドに所属するMFアントニオ・バレンシアを中心としたエクアドル代表にはどのような戦力が揃うのか。今回は、日本代表とグループステージ第3戦で対戦するエクアドルを分析する。(文:河治良幸)

text by 河治良幸 photo by Getty Images

U-20W杯を優先。逸材たちの不在が懸念

エクアドル代表
コパ・アメリカのグループリーグ最終戦で日本代表と対戦するエクアドル代表【写真:Getty Images】

 コパ・アメリカの3試合目で日本が対戦するのはエクアドル。ここまでの2試合で勝ち点がどうなっているかによって戦い方は変わるかもしれないが、額面通りに考えれば、もっとも勝ち点3 を狙える相手だろう。ただ、南米の地での彼らを決して侮ることはできない。

 過去5度のワールドカップで3度の出場、2006年のドイツ大会ではベスト16に進出しているエクアドルは自国開催の1993年大会でベスト4に輝いたのが最高成績で、1997年のベスト8もボリビア開催、つまり高地のアドバンテージを生かした結果だったと言える。そこから6大会はグループリーグ敗退だったが、大会100周年を記念して行われた2016年のコパ・アメリカ・センテナリオでベスト8に進出した。

 着実に力を伸ばしているエクアドルを昨年から率いているのはコロンビア人のエルナン・ダリオ・ゴメス監督だ。体型から”ボリージョ”(南米の揚げパン)の愛称を持つ指揮官は2002年の日韓ワールドカップでエクアドル初の本大会に導いた実績があり、いわばエクアドルの英雄だ。

 もともと攻撃的なサッカーを好むが、状況に応じてディフェンシブな戦い方もできる。ゴメス監督の最大の強みは何にも屈しないメンタルを背景としたカリスマ性であり、若手の台頭が著しいチームにあって、アントニオ・バレンシアを中心とした経験豊富な実力者を主軸にまとまりを見せているようだ。

 1つのネックは近未来のエースとして期待される長身FWレオナルド・カンパーナや193cmの巨漢DFジャクソン・ポロソら複数の若手選手が、南米王者として臨んだポーランドのU-20ワールドカップを優先してコパ・アメリカに選ばれなかったこと。

 まだまだ経験不足ながら、貴重なオプションにもなり得たタレントたちを欠くが、それでも東京五輪世代のMFジェクソン・メンデスを含む7人が95年以降の生まれで、若く活気のある選手たちをアントニオ・バレンシアや10番を背負うアンヘル・メナなどベテランが支える構成となっている。

バレンシアを中心としたその武器とは?

アントニオ・バレンシア
エクアドル代表の中心選手であるアントニオ・バレンシア【写真:Getty Images】

 国際Aマッチウィークの6月頭から集合して本番に備えるエクアドルは6月2日にマイアミのハードロック・スタジアムでベネズエラと試合を行い、10日にはメキシコと最後のテストマッチを行った。

[4-2-3-1]のトップに184cmのカルロス・ガルセスが張り、ボランチで23歳になったばかりのイントリアゴを同じLDUキトに所属するオレフエラと並べるなどの組み合わせをテスト。後半アディショナルタイムにエネル・バレンシアのゴールで1-1で引き分けたが、ベネズエラと互角以上の内容だった。

 メキシコ戦はガラリとスタメンを変え、2-3で敗れたものの2試合を通して第3GKのペドロ・オルティスをのぞく全員を出場させてコンディション、コンビネーションを高めた。

 いきなり優勝候補ウルグアイとの対戦になるが、2試合目のチリ戦も含めて勝ち点1でも取れていれば日本に勝利することで準々決勝に進出できる可能性はかなり高いため、高いモチベーションでかかってくる状況になりそうだ。

 エクアドルの武器は右のアントニオ・バレンシア、左のレナト・イバーラによる鋭い仕掛けを頼りとするサイドアタックで、サイドバックのキンテロスやベラスコも派手さは無いが彼らをフォローアップしながらシンプルに正確なクロスを上げて来る。

 格好のターゲットマンであるカンパーナの不在は日本にとってありがたいが、高さと強さを兼ね備えるガルセス、狡猾なストライカーであるエネル・バレンシアはゴール前で危険な存在だ。

 ディフェンスはブラジルのサンパウロに在籍するロベルト・アルボレダ、トルコリーグ(イェニ・マラティヤスポル)でプレーするアルトゥロ・ミナといったサイズがあり体も強い猛者が揃うが、個人で勝負に来る傾向がある。そうした選手たちを日本の持つスピードやコンビネーションで切り裂いていけるか注目だ。

(文:河治良幸)

【了】

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