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久保建英は「下部組織の選手の1人」。ジダン監督がベストと考える今後の待遇とは?

7月30日と31日の2日間に渡ってドイツ・ミュンヘンでアウディカップが開催された。レアル・マドリーは準決勝でトッテナムに0-1で敗れ、3位決定戦でフェネルバフチェに5-3と勝利。2試合ともに試合終盤からプレーした久保建英について、ジダン監督は3位決定戦の試合後に今後の待遇について言及している。(取材・文:本田千尋【ミュンヘン】)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

才能の片鱗は見せたが…

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アウディカップでは2試合とも試合終盤からプレーした久保建英【写真:Getty Images】

 果報は寝て待て、といったところだろうか。7月30日と31日の2日間に渡ってミュンヘンでアウディカップが開催された。夏を彩るミニトーナメントには、ホームのバイエルン・ミュンヘン以外に、欧州各国からトッテナム・ホットスパー、フェネルバフチェ、そしてレアル・マドリーの3チームが参加。トーナメントとは言え、プレシーズンのテストマッチの色合いが強い。交代は1試合につき11人まで許されていた。

 ジネディーヌ・ジダン監督率いるレアルは、初戦のトッテナム戦を0-1で落とすと、3位決定戦となったフェネルバフチェ戦は5-3で勝利。自由に動くセカンドトップを配した[4-4-2]の布陣をテストした。新しくエデン・アザールを迎え入れた攻撃陣は連携面が不十分で、守備陣も不安定で失点が収まる気配はない。ジダン監督は多くの課題をマドリードに持ち帰ることになった。

 そして今回のドイツ遠征には、新加入の久保建英も帯同。トッテナム戦では80分から右サイドで出場した。相手は前半から11人全員が入れ替わっており、後半の残り10分という試合の強度もかなり落ちた状況ではあったが、久保は随所に高い技術を見せ、何気ないアウトサイドキックにも才能の片鱗を伺わせた。

 そしてフェネルバフチェ戦では73分からの出場。ポジションはセカンドトップである。この2戦目で久保は強いインパクトを残すことはできなかった。その佇まいは、例えるならトップチームと契約したばかりのユースの選手、といった様子。技術面では光るものを見せたが、フィジカル面では物足りなさが映った。本格的にレアルのトップに食い込んでいくには、まだまだ時間は掛かるだろう。

ジダン監督の評価は…

 フェネルバフチェ戦を終えた後の会見で、ジダン監督は、久保について以下のように言及した。

「下部組織から多くの選手が我々に帯同している。まだ久保はマドリードに来たばかり。必ずや将来的にチームにとって重要な選手になる。だが繰り返す。マドリードに戻ってからどうするか考える。本人とも話し合ってね。カスティージャでプレーしながら我々の練習にも参加するのがベストではないかと考えているが、チームの状況次第だ。彼はロドリゴやヴィニシウスと同様に、とても若い将来性のある選手。慎重に扱っていかなければならない」

 まず、ジダン監督が「下部組織から多くの選手が我々に帯同している」と述べたように、今回のドイツ遠征には、ロドリゴや久保だけでなく、ミゲル・グティエレス、セオアネといったカスティージャの選手も帯同した。

 また、スキンヘッドのフランス人監督の起用法を振り返ると、トッテナム戦では右サイドでロドリゴが先発し、久保と交代するまで80分間プレー。フェネルバフチェ戦では、久保が入るおよそ10分前の61分に、右サイドのポジションでヴィニシウスに代わってロドリゴが投入されている。少なくともアウディカップの時点で、ジダン監督の中で久保の優先順位はそこまで高くはないようだ。

久保建英は下部組織の選手の1人

 フランス人指揮官は、同時に久保について「必ずや将来的にチームにとって重要な選手になる」と述べてはいるが、基本的にカスティージャの選手とはそういった「将来的にチームにとって重要な」存在になり得る選手。久保だけでなく、カスティージャ所属の選手は、大なり小なり誰もが「必ずや将来的にチームにとって重要な選手になる」と期待されているはずだ。ジダン監督の中では、まだ久保は下部組織の選手の内の1人、といった認識なのだろう。

 そして「カスティージャでプレーしながら我々の練習にも参加するのがベストではないかと考えている」と、久保の今後に言及。「慎重に扱っていかなければならない」という言葉も踏まえても、急いでトップチームの公式戦にデビューさせるつもりはないようである。「チームの状況次第」とも述べているが、よほど怪我人が続出でもしない限り、レギュラーシーズンでトップチームに召集されることはないのではないか。

 久保にとしては、「カスティージャでプレーしながら」、フィジカル面などをさらに鍛え、欧州の覇権を争うレアル・マドリーの戦いに備えたいところだ。すぐには難しいかもしれないが、カスティージャのラウール・ゴンザレス監督の下で最善を尽くしていれば、トップチームへの扉は自ずと開かれていくはずだ。

(取材・文:本田千尋【ミュンヘン】)

【了】

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