冨安健洋はハイブリッド型? ボローニャで切り拓く新境地。要求される、高度で「難しい」タスクとは

コッパ・イタリア3回戦、ピサ対ボローニャの一戦が現地時間18日に行われ、3-0で後者が勝利を収めている。今夏にボローニャへ加入した日本代表DFの冨安健洋は新天地初の公式戦でスタメンフル出場。チームの勝利に貢献した結果となったが、そのパフォーマンスはどうだったのだろうか。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

2019年08月19日(Mon)12時34分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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冨安が見せた積極果敢なプレー

冨安健洋
ボローニャに所属するDF冨安健洋(写真はプレシーズンマッチのアウクスブルク戦時のもの)【写真:Getty Images】

 前方にいる右ウイングを、猛スピードで追い越してゴール前まで走り込む。中盤の選手とワンタッチでパスを交換しながら前へとポジションを移し、細かいタッチのドリブルで相手のエリア内へ攻め込む。

 ルーズボールを深い位置で拾うや、味方に預けて一気に前まで突破。敵陣ゴール前まで迫り、正確な折り返しで味方のシュートを導く。相手ゴール付近でボールを受けるや、左足を使った繊細なボールコントロールでマーカー2人を揺さぶり、左足でクロス。

 積極果敢な攻撃の数々。さて、誰のプレーでしょうか。

 正解は、ボローニャDF冨安健洋。日本代表の新しい守備の要は、18日のコッパ・イタリア3回戦ピサ戦に右サイドバックとして出場。すると、攻撃面でアグレッシブな姿勢を存分に見せた。

 相手は、圧力に劣るセリエBのチーム。しかも採用しているシステムは3-5-2であり、対面のウイングバックはボローニャの右ウイングであるFWリッカルド・オルソリーニに引っ張られている。右サイドの守備はルーズになっており、スペースができていた。

「僕の前にスペースがあったので、うまくボールを呼び込んでやろうとした」という冨安は、序盤から積極果敢な攻撃参加を披露した。周囲にボールを預ければ前へと飛び出し、またオルソリーニやMFロベルト・ソリアーノらとも小気味よくパスを交換して攻めた。

 そしてボールを持って仕掛ける時には、なかなか大胆に行く。左右両足を同質に使えるところは彼の美点の一つだが、左足の細かいタッチでフェイントを仕掛けていくという心憎いこともやっていた。

求められる高度な役割

 リーグ戦開幕を一週間後に控えたカップ戦で、昨季までの主力だったイブラヒマ・エムバイェをベンチに追いやって先発出場である。この意味は小さくないはずだが、冨安自身はこう受け止めた。「正直に言ってまだ、スタメンを確保したとは思ってない。たまたま選んでもらったと思ってるし、今日もそういう意味では勝負でした」。自らのクオリティを示すため、積極果敢なチャレンジを行ったということだ。

 ボローニャでは加入以来、練習試合では右サイドバックとして使われることが多かった。しかしこれは、普通の右SBとはやや性質が異なる。サイドを守りながら、センターバックとしての役割も補完する。言ってみれば、両方のハイブリッド型なのである。

 ボールを持っていない時、ボローニャのシステムは4-2-3-1で自陣を固める。この時冨安は、サイドバックとしての守備対応を行う。サイドに走ってきた相手をカバーしボールを奪ったり、ウイングとの1対1に対処したり、逆サイドの攻撃に対しては鋭角に絞ってゴール前をカバーしたりする動きだ。

 一方ボローニャは、ボールを支配下に置いた時に4バックのシステムを解いた動きをするのだ。選手5人でピッチの幅を取るもので、この場合右ウイングのオルソリーニは右サイドいっぱいに開き、逆サイドでは左サイドバックのミチェル・ディルクスが高い位置を取る。この時冨安は、サイドバックからやや内側に入ったレーンにポジションを取る。この時の役割は、3バックのそれだ。

 あまり上がらず、ピサの2トップに対して3枚で対応するような最終ラインの形成に努める。もちろんボールを持てば、大外に開いたオルソリーニへ正確なパスを出すことも役目の一つだ。当然守備においては、カウンターを狙ってきたトップに当たりに行き、また裏のスペースをカバーすることをも担う。

 このように、タスクは2ポジション分。要求されていることは、なかなか高度だ。「この1ヶ月間結構難しかったですし、今も難しい。どこで(ボールを)受けたらいいかポジショニングとかも難しい」と苦労を物語る。現に試合中では、最終ラインのカバーに回るべきか、サイドに詰めていくべきかの判断に迷っている場面も2、3あった。

アグレッシブさを失わず

 しかし、そういう時でも最後はクレバーに対処。最終ラインのカバーを気にしてサイドの選手に詰め切れなかった時も、クロスのコースを読んでポジションを取り、インターセプトを成功させていた。

 そしてピサ戦の冨安のプレーで目を引いたのはもう一つ、アグレッシブな姿勢そのものだ。

 例えば、35分。右サイドに侵入してきた相手のパスコースを読み、足を出して軌道をそらせた。しかし肝心なのはそのあと。冨安は防いで終わりにせず、外のスペースの溢れたボールへ自ら走って行った。相手が詰めるよりも早くボールを抑える。さらに別の選手がプレスをかけてくるが、冨安はそれをドリブルで剥がし、前に行こうとしたのである。

 綺麗に体を入れ替えて、前方への推進開始。そこでファウルで止められるわけだが、守備から攻撃への切り替えと、選手を1枚抜いて数的優位を作り出す動きを一人でやったのである。自分で責任を持って、積極果敢に行こうとする姿勢はスタンドからも十分見て取れた。

 本人曰く、そんなアグレッシブさは「ミハイロビッチ監督が求めていること」だという。白血病の治療で現場を離れている指揮官のために一致団結するチームの雰囲気を読み取り、自身もプレーに体現する。冨安自身はそれを「僕も便乗してやっていかなければ」という言葉で表現していたが、深くチームの雰囲気や文化からやっているサッカーを理解し、溶け込もうという姿勢が見える。

 試合は3-0で、ボローニャは無失点勝利。今週末から開幕するセリエAで、対戦相手からのプレッシャーはこの日のピサとは別物だろう。だがその“前哨戦”で見せた冨安のパフォーマンスは、躍進の期待を抱かせるに十分なものだった。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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