中村敬斗が口にした本田&堂安超え「僕はもっといきたい」。オランダで追い求める飛躍への道

ガンバ大阪から2年間の期限つき移籍でオランダ1部のトゥエンテに加入したFW中村敬斗は、大きな夢を追いかけて欧州に乗り込んできた。シーズン開幕から主力に定着した19歳は、今何を思うのか。チームの苦境を救うために、そしてさらなる飛躍のために必要なものとは。(取材・文:舩木渉【オランダ】)

2019年10月07日(Mon)10時00分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images, Wataru Funaki
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ガンバから世界へ。プロ入り1年半で欧州移籍

中村敬斗
中村敬斗はPSVとのエールディビジ開幕戦で鮮烈な移籍後初ゴールを奪った【写真:Getty Images】

 2019年の夏、Jリーグから日本サッカー界の将来を担うであろう逸材たちが数多く欧州へと旅立った。ガンバ大阪からオランダ1部のトゥエンテへと移籍したFW中村敬斗もそのうちの1人だ。

「U-20ワールドカップを経験して、より海外のクラブでプレーしたい気持ちが強くなった」

 今年5月にポーランドで行われたU-20ワールドカップに、U-20日本代表の一員として参戦した中村は世界の舞台で4試合に出場。途中起用がメインだったが「自分の通用するところはハッキリわかった」と自信を胸に帰国した。

 三菱養和SCユースで育成され、2017年にはU-17ワールドカップにも出場している。“街クラブの星”と期待された逸材は、2018年に高校卒業を待たずにガンバでJリーガーとなり、プロの世界に足を踏み入れた。

 あれから1年半、活躍の舞台は欧州に。ガンバを離れる前に行われたトゥエンテへの移籍会見では「ガンバに入団した時は自分の好きなプレーしかできていなくて、それで試合に出られなくなったりもした」と大阪での日々を振り返り、「チームのためにプレーするのはプロサッカー選手として大事だということを学びました」と成長への手応えも口にしていた。

「もちろん自分の武器を最大限発揮するのは大事だと思うんですけど、ガンバで学んだことをしっかり発揮して、自分の存在をガンガン出していきたいです」

 デビューは鮮烈だった。強豪PSVアイントホーフェンとのリーグ開幕戦でスタメンに抜てきされると、得意の左サイドからのカットインで相手のマークを剥がし、ペナルティエリア左角から右足一閃。強烈なシュートを突き刺して初ゴールを挙げる。

 そして第2節のフローニンゲン戦では直接フリーキックを沈めて2ゴール目。そこから3ゴール目を挙げる第6節のフォルトゥナ・シッタート戦まで全ての試合で先発起用された。

トゥエンテは3連敗。チーム状況も芳しくなく…

 しかし、試練は突然に訪れる。フォルトゥナ戦で退場処分を受けた中村は、出場停止だった第7節のヘラクレス・アルメロ戦を欠場。トゥエンテはその試合に敗れ、第8節のフェイエノールト戦で先発復帰を果たすも1-5の大敗で今季初の連敗を喫した。

 中村が「10点くらいいかれてもおかしくなかった」と振り返ったフェイエノールト戦では、現状の力の差を思い知らされた。

「ヘラクレス戦の負けあたりから、チームとしてたぶんうまくいっていない時が多い。やっぱりうまくいっている時は、こっちがボールをもっといい形で持っていて、引き出しも多いですし」

 現地5日に行われた第9節のスパルタ・ロッテルダム戦は、連敗から抜け出すだけでなく、「うまくいっていない」状況の打開策を見つけるためにも重要な一戦だった。だが、結果的には1-2で敗戦。スタメン出場した中村も目立ったインパクトは残せず78分に交代でピッチを退いた。

「良くない時はやっぱり今日みたいに回しているけど、いききれないし、逆にカウンターで相手は少人数で、でもこっちは攻撃で前線に上がっているから攻め切られちゃう、シュートまでいかれちゃう場面が多い。最近そういうのが多いです。フェイエノールト戦くらいから、向こうが2人か3人くらいで、こっちは4、5人後ろにいるけど、スペースを使われて崩されちゃうんです」

 前半は0-0で折り返したが、後半開始早々の48分にトゥエンテは最初の失点を喫する。相手のロングボールを跳ね返して全体を押し上げようとした瞬間、相手に簡単につながれ、あっさりディフェンスラインの裏を取られてスパルタのFWハリル・デルヴィソグルに抜け出されてしまった。

 トゥエンテはすぐに1点を返し、ボールを支配して反撃に出るが、84分に右サイドバックのフリオ・プレゲズエロがレッドカードで一発退場に。これで再び苦しい流れとなり、88分にアーリークロスの処理が甘くなったところをブライアン・スメーツに突かれて勝ち越しゴールを許した。

守備に奔走。攻撃でも持ち味を出せず

中村敬斗
中村敬斗はスパルタ戦に先発。78分までプレーしたが持ち味を発揮しきれなかった【写真:Getty Images】

 2失点とも人数をかけない単発のプレーで、見ている側からしても「何でこんな簡単に…」と言いたくなるような悔しさの残るゴールだった。

「フェイエノールトは力の差が少しあったんですけど、今日(スパルタ戦)に関してはあんまりないというか、しっかりやればこっちも勝っているところはあった。そういう中で、なかなかうまくパスだったり、ディフェンスの部分もチームとしてハマらなかった」

 中村は前半から攻撃で持ち味を出せずに苦しんだ。スパルタの右サイドバックと右ウィングは推進力があり、どんどん前に出てくる。そうなるとトゥエンテは守備に時間と人を割かざるを得ず、全体が押し込まれてボールを奪った後の攻撃に迫力を出せなかった。

「戻りきっているからカウンターの時になかなか出ていけないというのはあると思います。特に相手の右サイドは今日は面倒臭い、ちょっと推進力のあるボールを持てる選手だったので、守備で結構下がる場面が多くて。自分は攻撃の選手ですけど、守備に回って強みをなかなか出せないとなっちゃうと良くないですね。今日ちょっと、正直そうなっちゃっていたので」

 後半に1-1となってからはトゥエンテがボールを握り、スパルタが受け身になる展開が長くなった。ところが中村は左サイドに張り出してもいい形でボールを受けられず、やや内側にポジションを取り直してパスを要求する場面が増えた。そうなると後ろ向きでボールを扱うことも多くなり、その後は外を走る左サイドバックにパスを渡すか、中盤に戻すか、選択肢が限られてしまう。

「後半は(トゥエンテが)ボールを持っていたので、(相手に)引かれていたから逆に難しかったかもしれない。前半は割と(前からプレッシャーに)来ていたからスペースもあった。後半は相手が割り切って引いてきたんで、逆にそれはそれで難しかったですね」

「まだまだ足りない。もっと貪欲に」

 ならば最前線のFWにロングボールを入れてからのシンプルな攻撃といきたいところだったが、今季初先発で1トップに入ったエミル・ベルグレーンはボールを収めきれず、そこでゴールに向かう流れが寸断されてしまう。トゥエンテはポゼッションしながらの攻撃でも、手数をかけないロングボールを活用した攻撃でも、停滞した際の有効な打開策を示すことができなかった。

「もうちょっと相手が戻ってくる前に攻めきりたい。やっぱりボールを持っていると、相手もブロックを作ると点を取るのは難しいじゃないですか。今日の後半はそれでした。それはあんまりしたくない。前半は相手が元気で、もっとガツガツとアグレッシブにくる相手だったらスペースができてくるので、そういう時の方が点を取りやすい。多分前半の方がチャンスは多かったし、後半は80分くらいまで出ていましたけど、(個人としての出来は)ちょっと何とも言えないですね」

 本人が語る通り、中村自身の出場時間は伸びてきている。ここまで先発した試合では全て途中交代だったが、78分間は今季最長だった。「僕のポジションは争っているライバルの選手が多いので、そうなってくると必然的に交代されちゃう。ちょっと疲れが見えたりすると、やっぱり試合の流れで勝っていたとしても、拮抗した試合だったら流れを変える意味で交代されやすいポジションだとは思います」と理解はしているが、周囲からの信頼をさらに強固なものにするには残さなければいけないものがあるのは間違いない。

 それは結果だ。ゴールやアシスト、数字に残り、勝利に直結するプレーでチームに貢献し続けなければ欧州では生き残っていけない。

「8試合が終わって3ゴール1アシスト。(ゴールは)二桁いけばいい方だと思いますけど、まだまだ足りないですね。もっと貪欲にいきたいです」

ガンバの“先輩”たちを超えていけ

中村敬斗
中村敬斗は貪欲に成長を追い求め、トゥエンテから飛躍を目指す【写真:舩木渉】

 多少強引だとしても、思い切って足を振っていくこと。中村らしい切れ味鋭いドリブル、左右両足から繰り出す強烈なシュート。貪欲に結果を追い求めることで、1つのゴールがチームの流れを劇的に変える可能性だってある。

「やっぱり何とか守備とかでも頑張る。他の外国人の選手がやらないことはないですけど、彼らは頭から出て疲れると最後の方は走らない習性もある。そういう部分では日本人の強みの根性だったり、気持ちもあるし、買われている部分だと思う。でも、一番はシュート。ドリブルしてからのシュート。PSV戦とかフォルトゥナ戦とかはそういう感じだったので」

 越えなければならない壁はたくさんある。だが、結果を残し続けた先にはチームを勝たせる選手として大きく飛躍を遂げる未来があるはずだ。たとえトゥエンテが今はうまくいっていないとしても、中村にはその流れを断ち切ることのできるだけのポテンシャルがある。

「こっちに来る前はオランダリーグのことを全然知らなくて、どんなレベルかわからなかったんですよ。ぶっつけ本番で。日本より上に見ていました。それはもちろん海外で成功する人は少ないから。本田圭佑さんは移籍して1年目は2ゴールくらいしか取っていない。降格してから2部で十何点か(16ゴール)取ったと思います。

(堂安)律くんも(フローニンゲンの1年目は)年明けで4点目を取って、(シーズンが終わって)9点でも相当評価されていた。それを考えちゃうときりがないですけど、僕はもっといきたい。まだまだです。これからなんで」

 そう、挑戦は「まだまだ」始まったばかり。本当の力が試されるのは「これから」だ。現時点では3ゴールを挙げているが、今後は中村のことを警戒してくるチームも増えるはず。その中で貪欲に突き進み、自らのゴールでトゥエンテを引っ張っていけるか。結果を残し続けた先に「本田超え」や「堂安超え」があり、結果を残し続けなければ真のワールドクラスへの道は拓けてこない。

(取材・文:舩木渉【オランダ】)

【了】

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