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見逃し厳禁!? “優勝候補”U-17フランス代表で注目すべき男たちとは。その特徴などを解説!【U-17W杯】

U-17ワールドカップ2019が現地時間26日にブラジルで開幕を迎えた。U-17日本代表は初戦でU-17オランダ代表を破るなど、決勝トーナメント進出に向けて幸先良いスタートを切っている。そんな同大会における優勝候補の一角がU-17フランス代表。その中で絶対に見ておくべき選手が2人存在する。今回はフランス在住記者がそんな注目選手の特徴などを解説する。(文:小川由紀子【フランス】)

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

若きゴールゲッターは勉強家?

アルノー・カリムエンド
ゴール嗅覚に優れたフィニッシャーであるアルノー・カリムエンド【写真:Getty Images】

 10月26日、ブラジルでU-17ワールドカップが開幕した。

 グループCで、韓国、ハイチ、チリと同組のフランスは、まずは初戦のチリ戦に2-0で勝利し、快調なスタートを切った。

 この大会の出場メンバーの中に、すでにビッグクラブが熱い視線を注ぐ注目選手が2人いる。

 一人はフォワードのアルノー・カリムエンド。もう一人はミッドフィルダーのアディル・アウシシュで、2人ともパリ・サンジェルマン(PSG)のアカデミーに所属している。

 カリムエンドはまだPSGとプロ契約には至っていないが、けが人が続出した今シーズンの序盤、第6節のリヨン戦でメンバー入りして話題となった。結果的に出番はなかったが、いざとなったらファーストチームで出場も可能なくらいの力があると判断されたということだ。

 パリ郊外シュレンヌの生まれで、10歳でパリのアカデミーに入団。昨シーズンからU-19チームに所属していて、昨年はクラブOBのチアゴ・モッタ監督のもと、33試合で26点をマーク。UEFAユースリーグでも、リバプールやナポリらを相手に7試合で5点と、高い得点力を発揮している。

 タイプとしては9番で、ゴール嗅覚に優れたフィニッシャー。得点はゴール至近距離からのものが多く、傑出した瞬発力で、一瞬でゴール前まで詰めて押し込む、というのが得意技。仲間が打ったシュートのセカンドチャンスをゴールにつなげるパターンも多い。重心が低く、安定感もある。

 彼はとにかく勉強家らしく、いろいろな試合を見まくっては、印象的なプレーを分析して取り入れているという。そういった姿勢が、彼の成長を加速させているそうだ。

U-17欧州選手権得点王

アディル・アウシシュ
今年5月のU-17欧州選手権で大会得点王に輝いたアディル・アウシシュ【写真:Getty Images】

 そして、今年5月のU-17欧州選手権で、準々決勝のチェコ戦での4得点など、4試合で9得点をあげて大会得点王となったアディル・アウシシュ。彼もまた、昨シーズンは16歳ながらチアゴ・モッタ監督のU-19チームでプレーしていた。

 U-17代表監督のジャン・クロード・ジアンチーニはアウシシュの才能について、「まずテクニックが素晴らしい。そしてそれを実戦の場でも自然に出すことができる。前方へのパスの供給にもなかなか面白いセンスがある。さらにパフォーマンスに波が少ない」と描写する。

 彼はロングキックの精度が高く、遠くの味方にピンポイントのパスを出したり、自らも積極的にミドルシュートを狙う。両足を使いこなし、思い切り足をうしろに引いてから蹴り出す、独特のキックフォームが印象的。ビジョンが良い、というのは持って生まれた才覚でもあるので、彼は今後も目立った活躍をするような気がする。

「彼の良さはチームプレーに徹するところ。賢い選手というのはそういうものだ。それに人の話をよく聞く、受け入れる姿勢が良い。成功する、という意志も強く、そのために苦難を乗り越える、というガッツがある」とジアンチーニ監督の評価も高い。

 PSGのアカデミーに入団したのは12歳のときだが、すぐに飛び級でU-15チームに加わり、フランス代表にはU-16から召集されている。U-17ワールドカップ初戦のチリ戦での2ゴール目は、彼とのワンツーから、マルセイユ所属のイザック・リハジが決めたものだ。

期待値は高いが…

 ただ、この時点で期待をかけすぎるのは禁物だ。

 フランスは、この大会で過去に1度だけ、2001年大会で優勝しているが、この時のメンバーで、その後もフランス代表に定着した選手は一人もいない。17歳というのは、心身ともにまだ完全に出来上がっていないもっとも微妙な時期で、この後の成長が予測しにくい年代でもあるのだ。

 2001年大会で9得点をあげてゴールデンブーツ賞に輝いたフロラン・シナマ=ポンゴルも、この特徴のある名前を聞いて「ああ! あの!」とご記憶の方もいるかもしれないが、その後は期待されたほどの活躍はなかった。19歳でリバプールに移籍したのを皮切りに、スペイン、ポルトガル、ロシア、アメリカ、スイス、スコットランド、タイを渡り歩くジャーニーマンとなり、35歳となったいまは、故郷のレユニオン島に戻り、出身クラブでプレーを続けている(そのサッカー人生も楽しそうだ)。

 ちなみにスコットランドでの所属クラブはダンディー・ユナイテッドで、ちょうど川島永嗣と同じ頃に入団し、シーズン終了後に退団している。

 とはいえ、若い原石を発掘できるユース世代の大会はなかなか面白い。フランス代表の試合を目にする機会があったら、ぜひカリムエンドとアウシシュに注目してみてほしい。

(文:小川由紀子【フランス】)

【了】

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