インテルの大崩れはなぜ起こったのか。今回に限らぬ弱点、真の強さを手に入れるためには?

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグF組第4節、ボルシア・ドルトムント対インテルが現地時間5日に行われ、3-2でホームチームが勝利を収めている。インテルは前半に2点のリードを奪いながら、後半に3失点を喫し、敗れる結果となった。なぜインテルは残り45分間で崩れてしまったのか。(文:小澤祐作)

2019年11月06日(Wed)11時30分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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ドルトムントとインテルによる大一番

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インテルはCL・グループリーグ第4節でボルシア・ドルトムントと対戦している【写真:Getty Images】

 今季のチャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグF組は、多くのサッカーファンから「死の組」と呼ばれている。理由は単純。バルセロナ、ボルシア・ドルトムント、インテルといった実力が拮抗した3クラブが同じ組に入っているからだ。そして、多くの人の予想通り、F組は「死の組」となっている。グループリーグ第3節を終えた時点で首位に立つバルセロナが勝ち点7、ドルトムントとインテルが同4で並んでおり、スラヴィア・プラハもインテルから貴重な勝ち点1を奪っている。まさに、混戦だ。

 そんな中、迎えたグループリーグ第4節はこの両チームにとって大一番となった。勝ち点で並んでいたドルトムントとインテルである。

 両者は現地時間10月23日に行われたグループリーグ第3節でも対戦しているが、その時はホームのインテルが2-0の完封勝利を収めている。シュート数は8本(インテル)と5本(ドルトムント)と拮抗したゲーム展開となっていたが、訪れたチャンスをしっかりモノにしたインテルが今季のCLでの初勝利を挙げた格好となった。

 インテルはこの日、その一戦からメンバーを2人変更。中盤にMFマティアス・ベシーノを置き、左ウィングバックにはMFクワドォー・アサモアではなく今季フィオレンティーナより加入したDFクリスティアン・ビラーギを起用している。システムはアントニオ・コンテ監督就任後、お馴染みとなっている3-5-2だ。

 対するドルトムントはインテルとのグループリーグ第3節で3バックを採用していたが、この日はシステムを4-2-3-1へと変更。チームの絶対的存在であるMFマルコ・ロイスを欠く中、前線は1トップにMFマリオ・ゲッツェを起用し、右サイドにFWジェイドン・サンチョ、左にMFトルガン・アザール、トップ下にMFユリアン・ブラントといった並びになった。

 クラブの公式サイトによると、インテルを率いるコンテ監督は、ドルトムント戦の前日会見で「我々が守備的な試合をすると予想している人は間違いだ。自分たちが知るゲームを披露する。相手に攻め入るゲームだ。ホーム、アウェイで戦おうとも我々のプレースタイルに影響はない」とコメントしていたという。その闘将の言葉通り、インテルは立ち上がりから凄まじい勢いを持ってドルトムントに挑んだ。

前半はほぼ完璧だったインテル

 試合開始のホイッスルが鳴り響くと、さっそくお互いの特徴が現れた。最終ラインから丁寧にボールを繋ぐドルトムント対し、インテルは前線から猛烈なプレスを与え、相手のビルドアップを阻止しにかかる。全体のラインは高めに保ち、選手間の距離をコンパクトに保つことで相手にとって有効になり得るスペースを消す。たまらずドルトムントはロングボールを敵陣へ放り込むが、インテルが誇る屈強な3バックを前にそれらはことごとく跳ね返された。

 試合の序盤からペースを握ったインテルは、その勢いのまま先制ゴールを奪取する。MFアントニオ・カンドレヴァのロングボールに抜け出したFWラウタロ・マルティネスが右サイドで相手DFを抜き去ると、最後はカットインから左足で豪快にゴールネットを揺らした。これは、試合開始からわずか5分後のことだった。

 グループリーグ第2節のバルセロナ戦同様、電光石火の一撃を放ったインテルは、その後もプレー強度を一切落とさず、ドルトムントに立ち向かった。守備時は5-3-2になるインテルは中盤の位置でボールをキープされる時間も多かったが、そのエリアは割り切って捨てる。その分、アタッキングサードでのディフェンスにより一層の集中力を持ち、ドルトムントの攻撃を最後の最後で身体を張り、跳ね返し続けた。

 対してボールを奪うと、インテルはあまり攻め急がない。もちろん隙があれば縦に鋭いパスを入れ、局面を打開することもある。しかし、基本は最終ラインから丁寧に繋ぎ、無理はしない。早い時間に1点を奪ったので、なおさらだ。

 理想的な攻撃の形は、FWロメル・ルカクにボールが収まったところで全体のラインを上げ、中盤で人数をかけて相手を左右に揺さぶること。L・マルティネスの走力を生かして裏へ蹴り込むこともあるが、基本は足下にボールを収める。中盤では周りの状況を確認しながら遅攻に切り替えることもあるが、アタッキングサードに侵入すると一気にペースが加速する。これにより、相手のマークがついてくることができず、フリーな選手ができるわけだ。

 その理想が形となって現れたのが40分のシーン。MFマルセロ・ブロゾビッチが自陣からDF3人を外して敵陣へ侵入すると、L・マルティネスへパス。アルゼンチン人FWは反対サイドのカンドレヴァへサイドチェンジのパスを送ると、その瞬間に中央後ろからベシーノが上がってくる。そこへボールが入ると、背番号8がダイレクトでゴールへと流し込んだ。

 ブロゾビッチにボールが入った瞬間は、まだ全体のギアは上がっていない。しかし、同選手がプレスを外し、L・マルティネスへパスを出すと、反対サイドのカンドレヴァが加速。そこへボールが入りドルトムントのDFを揺さぶると、ベシーノがフリーに。そしてゴールが生まれた。まさに、完璧な崩しであった。

 前半はドルトムントに支配率65%を記録されるものの、インテルはシュート数6本を放ち2点を奪うなど、試合を優位に進めていた。持たれたというより、持たせた、といった言い方が正しいだろう。インテルにとってはこれ以上ない、最高の前半だったと言える。

 DFディエゴ・ゴディンはインテルTVの試合後のインタビューで「前半は最高レベルのインテンシティで素晴らしかった」と振り返っていたという。この時点でインテルの勝利を確信した人も多かったのではないか。

疲労による影響でDFラインが崩壊

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インテルは後半に3失点を喫し、敵地で逆転負け【写真:Getty Images】

 しかし、インテルにとっての悪夢はここからの45分間であった。

 後半開始から凄まじい勢いを持って立ち向かってきたドルトムントを前に、インテルのDF陣は重心を低く保ってしまう。セカンドボールへの反応なども遅れ、2次攻撃に繋げられる。恐れずボールホルダーにプレッシャーを与える場面もあったが、パスで簡単に回避されてしまった。

 ドルトムントのシステムは4-5-1だが、ゲッツェはご存知の通り典型的な1トップタイプではないため、2列目の位置に下がってくることが多い。そのため、MFアクセル・ヴィツェルも加わった5人が相手陣内で横並びになることがあり、長いボールを使わずサイドからサイドへボールを移動させることがあった。

 インテルの5バックに対し、ドルトムントの攻撃5枚の並び。そのため、インテルは少しでもプレスが遅れると、フリーな選手を作らせてしまうといったことが起きた。

 そうして生まれた失点シーンが51分の場面。左サイドのブラントが中へ切り込むと、中央のDFマッツ・フンメルスへパス。そして右のT・アザールへボールが回ると、縦にゲッツェが走り込む。そこへパスが出ると折り返しにDFアクラフ・ハキミが飛び込み1点を返したのだ。

 こうして流れは完全にドルトムントへと傾いた。64分には自陣でのミスからブラントにゴールを許し、2点のリードが消えてしまった。勢いは完全にドルトムント。インテルは前半に見せた強度が完全に無くなっており、ただただ相手の猛攻に耐えるしかなかった。

 前半に前線から猛烈なプレスを与え、疲労も溜まっていた。相手の一人ひとりに対するアプローチが遅れ、敵陣にすら侵入できない。WBとCBの間のスペースを面白い様に使われ、最終ラインを深い位置まで下げられてはクリアボールを拾われ、再び攻撃を許す。この繰り返しであった。

 インテルはMFヴァレンティノ・ラザロや怪我明けのMFステファノ・センシらを送り出すものの、状況は好転しない。コンテ監督も厳しい表情で、ただただピッチを見つめるしかなかった。

 77分にはハキミとサンチョの2人によるパス交換からWBとCBの間を突かれ、3失点目。ついに逆転を許した。疲労のせいか、カンドレヴァはまったくついていくことができず、完全に崩された形となった。試合はこのまま終了し、インテルはグループリーグ3位に後退している。

 結果、インテルは後半わずかシュート3本に終わるなど、苦戦を強いられた。対してドルトムントには後半だけで実に14本ものシュートを浴びせられた。ボールロストも前半の48回に対し、後半は69回。あらゆる面で後手に回ってしまった。

今季の課題は後半にあり

 前半で試合の主導権を握りながら、後半に崩れて勝ち切れないというのは、CL・グループリーグ第2節のバルセロナ戦も同じだった。その時は1点のリードをひっくり返されたが、今回は2点のリードだ。

 試合後の記者会見でコンテ監督も「今夜はバルセロナで起きたことの繰り返しだった。恐らくその試合より酷いだろう。2点をリードしていたからね。精神的に痛いよ」とコメントしていたという。こうした負け方が初めてではないあたりも、かなりのダメージとなったのではないか。

 すでに分かっていることだが、今季のインテルの課題はやはり後半にある。CLでは今回のドルトムント戦とバルセロナ戦でそうしたあたりの脆さを露呈してしまっている。これはリーグ戦のデータになってしまうが、インテルは今季のセリエAで11失点を喫しているが、そのうちの半分以上となる7点が、実に後半に奪われたものとなっている。45分から60分の間が3点、60分から75分の間が1点、75分から90分までが3点といった内容だ。とくに集中力の切れやすい後半立ち上がり、そして疲労が溜まってくる終盤に点を許していることが多いのがわかる。

 反対に今季のリーグ戦でインテルが奪った得点は24点。そのうちの13点は、実に前半だけで奪ったものとなっている。このあたりの強さは言うまでもない。

 下位相手には、前半で奪った点で勝ち切れることができるかもしれない。ただ、強豪相手にはそう簡単にいかないのが現実だ。バルセロナ、ドルトムント、ユベントスといった相手には、前半は自分たちの戦い方が通用したが、後半は試合のペースを完全に握られていた。事実、同3試合で後半に点を奪うことができなかったのである。

 インテルは前半から猛烈なプレスを与えるため、その分、体力の消耗は激しくなる。90分間継続した場合はなおさらだ。そして疲労の蓄積は、集中力の低下にも影響する。後半に失点を喫することが多いのは、そこが原因となっているはずだ。

 豪華な新戦力を加えた今季のインテルは、間違いなく昨季より強い。ユベントスが現在のセリエAで首位に立っているが、間違いなく今後も優勝争いに絡み続けるだろう。

 しかし、上に記した課題を克服しなければ、絶対王者・ユベントスの壁は乗り越えられない。CL決勝トーナメント進出に向けても同様だ。後半の戦い方の改善。ここが達成されたとき、インテルは真の強さを手に入れるはずだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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