冨安健洋が感じさせた「己」の存在。DFリーダー不在も役割を全う、勝利に貢献した大きな意味

セリエA第17節、レッチェ対ボローニャが現地時間22日に行われ、2-3でアウェイチームが勝利を収めている。日本代表DFの冨安健洋はCBとしてフル出場。ディフェンスリーダーのダニーロ不在の穴をしっかり埋めたと言える。勝利に貢献できた意味は、決して小さくないはずだ。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

2019年12月23日(Mon)11時31分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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冨安はCBとして出場

冨安健洋
レッチェ戦でCBとしてフル出場を果たした冨安健洋【写真:Getty Images】

 先週のアタランタ戦、試合終了間際。ボローニャのセンターバックを務めるDFダニーロが、相手FWムサ・バロウをファウルで倒す。この日2枚目のイエローカードを喰らい、退場。シニシャ・ミハイロビッチ監督が急遽投入を命じたのは、サイドバックを務めるDFイブラヒマ・エムバイェだった。

 ボローニャのサイドバックは2人とも本職は中央だ。左サイドバックを務めていたステファノ・デンスビルか、右サイドバックの冨安健洋か。エムバイェの投入は、どちらか一方をセンターバックに回すという決断を意味していた。その結果、中央に回ったのは冨安だった。

 そしてダニーロが出場停止となる22日のレッチェ戦も、最終ラインの顔ぶれは同じものとなった。右からエムバイェ、冨安はマッティア・バーニと中央でコンビを組み、動かされなかったのは左サイドのデンスビル。守備をまとめるとともに、後方からの組み立てとの中心となるダニーロの役割を、冨安が任されたということになるのだ。

 昇格組のレッチェは、決して戦力が充実しているとは言えない。ただ粘りのサッカーを見せる、侮れない相手だ。縦への速攻には迫力があり、先発のクマ・ババカルやスーパーサブとして流れを変えるジエゴ・ファリアスもセリエAで実績のあるFWである。攻撃面でも強力なサイドバックとして、セリエAで認知され始めた冨安。センターバックとしても一目置かれるためには、しっかりと抑えたい相手であった。

 その結果、上々のパフォーマンスを展開。80分間はチームともども、安定感のあるプレーで後方を引き締めていた。

ボローニャ守備陣の安定感

 冨安の役割は、4-2-3-1の右センターバック。ただしチームがボールを保持し攻撃を組み立てるときは、彼が右サイドバックでプレーしている時とプレーゾーンに大きな違いはなかった。右サイドバックのエムバイェを上がらせ、サイドバックのデンスビルを後方に残す形となるので、最終ラインは3バック状となる。冨安が担当するのは右寄りの位置だ。

 ただ守備においては、当然中央の相手に責任を持たなければならなくなる。ラインディフェンスの中心として正確なポジションを取り、スペースを開けることなく、ボールを視野に入れつつ対面のFWにも己の存在を感じさせる。

 それが早速試されたのが、11分のプレーだった。味方が侵入を許してババカルにパスが渡り、シュートが決まる。しかし、その時に手を挙げてアピールしたのは冨安。最後の段階でババカルをしっかりとオフサイドポジションに残し、ゴールは無効となった。

 その後は、来る相手を着実にカバー。前線からプレスを掛けていくチームのコンセプトに沿って、最終ラインも高い位置を取り、相手FWにも高い位置からプレッシャーを掛けて動きを制限する。また後方からの安定した組み立てでも貢献した。プレッシャーの少ない位置に動いて味方からパスを呼び込み、その間に周囲を把握。パスを受け、相手が詰めてくる時には前方まで視野に貼っており、プレスを掛けられても慌てずに縦パスを通す。一気に前半までミドルボールを放ち、味方の攻撃につながる場面も度々あった。

 冨安をはじめとしたボローニャの最終ラインの安定感は、レッチェのそれと比べると際立っていた。向こうは、ボローニャの攻撃陣の繰り出すハイプレスに慌ててミスを連発。これを拾いまくってゴールチャンスを山ほど築いたチームは、43分に先制点を奪った。

 後半に入ると、レッチェは攻撃の駒を一枚入れ替えて攻めてくる。しかし圧力を増す相手に対しても、冨安の安定したボール処理が光った。パスコースを読み切って、ババカルの前でボールを奪い、しかもエレガントなトラップで足元に正確に収める。そして奪った後も、プレスに戸惑うことなく冷静にパスを出し続けた。

 空中戦では着実にクロスを弾き返し、インターセプトも成功させる。そして何より、最終ラインも高くキープをし続けた。これによってボローニャの布陣は間延びせず、戦術上の生命線である高い位置でのプレスを掛け続けられたのだ。そしてスピードのある前線の攻撃陣は、鮮やかなショートカウンターでレッチェを攻略。アウェイでありながら攻撃的なプレーを貫き、66分までに3点のリードに成功したのである。ピンチを作らせずにだ。

終盤はレッチェの圧力に苦戦も…

 ホームはもちろんのこと、アウェイでも果敢に攻めていくのがミハイロビッチ監督率いるボローニャのスタイル。その土台となる最終ラインの軸として、冨安はセンターバックとしても十分機能していた。チームともども終盤になるまでは、全く問題なく試合を進められていた。

 ただ、一筋縄ではいかないのがセリエA。レッチェはこれまで、2点以上のビハインドから終盤にゴールを集めてしぶとく追いつくという展開を2度やっている。ボローニャがパスをつなぎ、試合のまとめに入った時、彼らは圧力を増した。放り込みからペースを強引に掴むと、2ゴールを決め詰め寄る。ボローニャは、ほぼ手中にしていた勝ち点3のうち2つを終盤で失いそうになっていた。

 冨安が失点に絡んでいたわけではなかった。2失点目のシーン、ファリアスにはシュートブロックに行った眼前でミドルシュートを決められたが、その前に中盤がボールをロストしたことが直接の要因だ。ただ相手の圧力に驚いて最終ラインが下がったという意味では、厳しい見方をすれば彼にも責任の一端はあったかもしれない、ということになる。きっちりクリーンシートで終わらせるために、リーダーシップを取れるかどうかも今後は求められることになるだろう。

 とはいえチームにとっては、10位以内でウインターブレイクを迎えることができた大事な一勝である。守備のリーダーの代役として、勝利に貢献できた意味は小さいものではないだろう。新年6日のフィオレンティーナ戦ではどの位置でプレーするかは分からないが、さらなる活躍に期待したい。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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