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リバプール南野拓実、プレミアリーグデビュー戦の本当の評価は? 世界王者の攻撃陣の中では…

プレミアリーグ第24節、ウォルバーハンプトン対リバプールが現地時間23日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。FW南野拓実は33分に負傷したFWサディオ・マネに代わり出場。これがプレミアリーグデビューとなった。期待を背負って登場した背番号18のプレーはどうだったのか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

南野、ついにプレミアデビュー

南野拓実
プレミアリーグデビューを果たしたFW南野拓実【写真:Getty Images】

 その時は突如として訪れた――。

 プレミアリーグ第24節、ウォルバーハンプトン対リバプール。試合は、8分のMFジョーダン・ヘンダーソンによるゴールで、アウェイチームが1-0とリードしていた。しかし、幸先良いスタートを切っていたリバプールであったが、33分にFWサディオ・マネがピッチに座り込む。プレー続行が不可能となってしまったのだ。

 ベンチでは交代の準備が進んでいた。そこでユルゲン・クロップ監督から声をかけられたのは、FW南野拓実であった。

 これが日本代表FWにとってのプレミアリーグデビュー。少し予想外の出番となったが、ザルツブルクでの活躍を評価されてやってきたサムライが、世界最高峰のリーグでどのようなプレーを披露するのかに大きな注目が集まった。

 南野の投入に伴い、クロップ監督はシステムを4-4-2に変更。背番号18は左サイドハーフでの出場だった。

 ピッチに入った直後から、南野は積極的にボールを触る。サイドに張る、中へ絞る、下がってボールを引き出すなど、ピッチ上で動きを繰り返して味方のサポートに回った。

 35分にはGKアリソンからのパスをワンタッチで浮かし、寄せに来たDFマット・ドハーティを華麗にかわす。一気にボールを前へ運び、チーム全体のラインをグッと押し上げるなど、試合の入り方は非常に落ち着いていた印象だった。

 前半ATにはビッグチャンス。FWモハメド・サラーがドリブルで前進すると、一気にゴール前へ。背番号11の左側を並走していた南野がフリーになっており、そこにボールが来ればほぼ一点といったシーンだったが、そこは昨季のプレミアリーグ得点王。南野にパスを出すことなく、自らシュートを選択した。しかし、南野はパスこそ来なかったものの、サラーのサポートにしっかりと入っていたことは非常に良かった。

 南野は後半、ポジションを右サイドハーフへと変更。前半より縦への意識を持ってプレーできることは明らかだった。

 しかし、南野はなかなかボールを収めることができない。チーム自体も51分にFWラウール・ヒメネスに得点を許して以降ペースを落としており、背番号18は前線で相手の脅威となることはできなかった。

 ボールを受けても低い位置でのものがほとんどで、パスも違いを生みだすものではなくバックパスや横パスが大半を占めていた。大きなミスはなかったが、無難なプレーが多かった印象だ。リバプールは70分にMFファビーニョを投入後、システムを再び4-3-3へと戻したが、南野のプレーぶりに大きな変化はなかった。

 試合は終盤のFWロベルト・フィルミーノのゴールでリバプールが2-1で勝利。リーグ戦での連勝を14まで伸ばし、トップの座を快走している。ウルブス戦はここ最近で最も苦戦を強いられた試合になったが、それでも勝ち点3を奪えるあたりに、リバプールの強さが伺えた。

南野の評価は?

南野拓実
試合後、クロップ監督は南野がふくらはぎに違和感を覚えていたことを明かしている【写真:Getty Images】

 データサイト『Who Scored』によると、南野はこの試合でシュート数2本、パス29本、パス成功率93%、ドリブル成功数2回を記録していたという。レーティングは途中出場となったファビーニョ、FWディボック・オリギを除いてチームワースト2位となる「6.4」であった。

 まだリーグ戦1試合を終えたばかりであり、ここですべての評価を決めるのは時期尚早と言えるが、あえてこの試合における南野のパフォーマンスを評価するならば平均点以下が妥当だろう。

 単純な話だが、やはりまだチームメイトとの連係がそこまで深まっていない。南野がボールを欲しいタイミングでパスが出なかったり、反対に味方がボールを呼び込むタイミングで南野がパスを出さなかったりと、お互いの意思が通じ合っていない場面はウルブス戦でも何度かあった。当然、このあたりは今後も試合数を重ねていけば自然に伸びてくる部分ではあるが、マネの代役として出場した今回の試合ではやはり物足りなさが残ってしまった。

 また、この日は南野の良さがほとんど出なかった。ボールを受けるのも足元ばかりで、スピードアップして裏へ走り出す場面はとくに後半は見受けられなかった。縦に突破するシーンも少なく、テンポを上げることなく無難に横パスやバックパスを選択することも多々あった。スピード感あふれる攻撃が魅力的なリバプールの中では、効果的なプレーであったとは言い難い。

 ヘンダーソンが相手のプレスを受けながらボールを保持している時も、南野は足元でパスを受けようとしていた。しかし、主将は恐らく相手の背後に走り込んでほしかったのだろう。そこを感じ取ったMFジョルジニオ・ワイナルドゥムが一気にスペースへ走り込み、そこにヘンダーソンからパスが出てくるシーンがあった。南野はこのあたりの判断力等も、世界王者の一員ならば瞬時に起こさなければならないだろう。

 ただ、全体的に強度が高く、プレースピードも他のリーグと比べても圧倒的に速いプレミアリーグに、1試合目ですぐ適応できる選手はそう多くはない。いまはリバプールの主力となっているファビーニョも、加入当初は馴染むのに相当苦労していた。

 さらに英紙『ミラー』によると、クロップ監督は試合後に「彼(南野)はすぐにふくらはぎに違和感があったので、ハーフタイムに治療が必要だった」とコメントしていたという。ウォーミングアップが不十分なままプレミアリーグの初陣を迎え、かつウルブスのような難敵を相手にするのは、南野にとってかなり難しかったと言える。

 確かにこの日の南野には物足りなさが残った。ただ、上記したことを踏まえると、それも致し方ない部分ではあると言える。今後もリバプールはリーグ戦、チャンピオンズリーグ(CL)、カップ戦と試合が続く。厳しい日程の中、南野には今後もチャンスは訪れるだろう。引き続き注目していきたい。

(文:小澤祐作)

【了】

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